主張 新感染症時代に備えるために  PDF

 「トコジラミ」って何 !…なあんだ「南京虫」のことか!と合点しつつ、戦中戦後の混乱期でもないのに今さらこんなものがどうしてと訝しく思われた方も少なくなかろう。
 麻疹にして然り。コロナ禍のために一部疎かになった定期接種の狭間をすり抜けるように感染者の報告が相次いでいる。
 世界そして日本中を席巻した新型コロナウイルスがどうにか小康状態となり、さあこれで平常に戻れるかと思う間もなく、予期せぬ感染症の報道に戦々恐々…とまでは世の中なっていないようである。
 しかし、例えば「BMJ Global Health」には近未来において、今般コロナ禍における2020年の死者の12倍の死者が出る恐れのある四つの致命的なウイルスが「人獣共通感染症」の「波及効果」により感染拡大する可能性を指摘する旨の掲載があり、世界の公衆衛生に対するリスクに対処するための「緊急行動」を求める専門家もいるとのことである。
 振り返って我が国の状況を今一度見てみると、定期接種用の麻疹・MRワクチンさえ枯渇状態という。コロナ禍の総括も全く始まらない。
 もちろん国の取組みを批判するだけではなく、我々医療人も来たるべき「新感染症時代」に向けて、各医療機関ごとの可能な限りの取組みを考えておくべきではないか。それは震災等の「大災害」への備えにもつながるものであろうし、日常臨床上の細かな工夫の積み重ねから始めればよい。
 それらの方策を考えるために、コロナ禍の総括は是非ともしておくべきであろう。そのために、保険医協会は今般のコロナ禍における会員各位の体験記を募集している。反省点や要改善点があぶり出されることで次のステップも見通せるのではなかろうか。
 「人類は感染症により滅びる」との先人の言葉が現実のものとなってはならないが、残された時間もあまりなさそうである。

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