乗り鉄ドクの趣楽悠遊 vol.15 村上 匡孝(綴喜)  PDF

A列車で行こう
ええ列車で行こう、ええ旅をしよう (JR九州)

 「和」と「凛」、日本のおもてなしの心が込められた800系九州新幹線「つばめ」で熊本に参上します。熊本から特急「A列車で行こう」(写真1)に乗ってローカルな鉄旅で行こう。この観光列車のテーマは“走るジャズバー、海辺を走る大人の時空間”。外観は「16世紀大航海時代のヨーロッパ文化と古き良き天草」を表現する黒と金のツートンカラー(写真2)、外の光が差し込むステンドグラスで車内は煌びやかに彩られています(写真3)。水戸岡鋭治氏の心憎い演出デザインの動くジャズバー「A−TRAIN BAR」です。リズミカルに響くジャズの名曲を聴きながら、海の眺望をおつまみにして、「Aハイボール」で楽しむ旅のひと時とひとコマ。名曲「A列車で行こう」のA、天草(Amakusa)のA、そして、大人(Adult)のA、列車が目指すAクラスのバーカウンター。九州のA列車は、16世紀から南蛮文化が入った天草ゆかりの欧州イメージで飾られています。
 内装やフィギュアを見て徘徊し、カウンターでカボスのカクテルを舐めながらジャズを聴き、海苔栽培の柵の造形美や有明海干潮時に露出する海底の泥の文様など車窓を鑑賞します。名が特急にもかかわらず遅い動きが特級モノ。天草湾の旅情と車内の時間と空間をノロノロ楽しむ「A−train」。ええ列車です。
 ほろ酔いでほろほろしていると、「記念のお写真をお撮りしましょうか」アテンダントが耳元で囁きます。ほろっと来そうなものですが、「拙者、独鉄おじんの一人旅。気遣い無用に願います。記念にお嬢さんをお撮りしまひょ」(写真4)。微笑みがじわっと広がります。
 三角駅の木造駅舎は明治の鉄道遺産。高い天井と大きな窓のちょっと洋風な洒落た駅舎。その向こうには青い海。磯の香りと潮風と天草諸島の玄関港の旅情を感じます。終着駅と港のひと時の後は、駅弁「天草大王」と米焼酎「鳥飼」を買い、帰りの新幹線「みずほ」の車中で憩い、“大王の帰還”の夢をみて眠りに落ちた乗り鉄ドクでした。
 今回の推し地酒、産土 2022山田錦 木桶醸造 三農醸(花の香酒造、玉名郡、熊本)
 (A列車で行こう 2018年9月乗)

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