大腸内視鏡的粘膜切除術後に下血
(50歳代前半男性)
〈事故の概要と経過〉
患者は職場の健診で便潜血陽性との結果を受け、本件医療機関を受診し、大腸内視鏡的粘膜切除術(横行結腸および下行結腸の計3カ所の小ポリープ切除)を受けた。しかし手術翌日の夜間より3回下血があったため、担当医は下部消化管内視鏡検査を実施予定としたが、手術中の痛みが強かったことから検査を拒否し、転院を希望したため、他院に転院となった。なお、出血部位であった下行結腸(AV[肛門縁]37p)については、手術中クリップの必要なしと判断し行わなかった。
患者は、医師の実名とともに、手術中の痛みと夜間の下血に関する対応不備などを非難する口コミをインターネットに書き込んだ。さらに本件医療機関に対し、治療費などの返金・見舞金を要求してきた。
医療機関側は、下血の原因となった下行結腸の手術でクリップをしなかったことは必要ないと判断できる状態であったためで、下血は合併症であったとして医療過誤を否定した。また、患者がインターネットに書き込みを始めたことやコミュニケーションがうまく取れないことから、弁護士を介して患者対応することにした。なお、診療録に医療行為の施行時間を記載していなかったことや担当医が上司に術後の患者の状態を報告しなかったことは、反省点とした。
紛争発生から解決まで約1年8カ月間要した。
〈問題点〉
医療機関側の話を聞く限り、診療録の記載などには改善の必要があるものの、手術に関する診断・適応・手技・説明・事後対応に問題はなかったと考えられる。
〈結果〉
医療機関側が患者に対して医療過誤はなかった旨を説明し、その後患者からのクレームが途絶えたため、立ち消え解決と見なされた。インターネットへの書き込みは、医療機関側弁護士が患者に対して早期に対応したこともあり、患者自らが削除した。