医療機関に負担強いる医療DX アンケート結果「医業継続する自信ない」実態を訴え  PDF

 国はオンライン資格確認等システムを医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤として、2023年4月に全ての医療機関に原則義務付けた。今後ネットワークを拡充し、レセプトや特定健診に加え、予防接種、電子処方箋、自治体検診、電子カルテなどの医療・介護全般にわたる情報を共有・交換できる「全国医療情報プラットフォーム」の構築を計画している。
 25年からはおおむね全ての医療機関で電子処方箋を導入するなどの工程が示されているが(表)、医療現場では医療DX対応への負担から不安の声が多い。協会は現状を把握するため会員アンケートを実施。「このままでは医業を継続する自信がない」との結果を踏まえ、首相・厚労大臣・デジタル大臣らに要望書を提出した。

協会会員アンケート
負担強いる医療DX改定がこれ以上進んだ場合、医業を継続できるか

実施期間=2023年10月20日〜11月10日
調査方法=ファクス
調査対象=ファクス登録のある会員医療機関1531
回 答 数=221(回答率14%)
年齢=40歳代22人(10%)、50歳代56人(25%)、60歳代83人(38%)、70歳代49人(22%)、80歳以上11人(5%)

医業継続「自信ない」「分からない」6割

 医療機関に負担を強いる医療のデジタル化にかかる制度改定が実施された場合、医業を継続できるかとの質問に対して、「おそらく継続できる」39%、「継続する自信がない」36%、「分からない」25%であった。年代別に見ると、高齢会員ほど「継続する自信がない」「分からない」の回答が多くなっている(図1)。
 「継続する自信がない」「分からない」と回答した会員に、対応が困難と考えられる施策を複数回答で聞いたところ、「電子処方箋を25年からおおむね全ての医療機関で導入」86%、「電子カルテ情報共有サービス(仮称)への対応」85%、「共通算定モジュール(クラウド型レセコン)への対応」75%、「標準型電子カルテへの対応」72%―などであった(図2)。

年間の保守料高く現点数で見合わず

 継続できない理由を複数回答で聞いたところ、「年間保守料が掛かり過ぎる」66%、「医療DXの理解・IT機器の操作が不得意」64%、「対応する診療報酬が購入・運用の費用に見合っていない」63%、「『全国医療情報プラットフォーム』の構築など、患者の個人情報収集の政策に共感できない(支持しない)」58%―などであった(図3)。

電子処方箋導入の義務化に反対

 電子カルテ、レセコン(単体)、オンライン資格確認システムの使用率は図4・5・6の通り。
 電子カルテ購入費用は平均293万5千円※、中央値300万円、年間保守料は平均51万1千円※、中央値48万円、レセコン購入費用は平均176万6千円※、中央値167万5千円、年間保守料は平均23万8千円※、中央値20万円、オン資購入費用は平均45万1千円※、中央値42万9千円、年間保守料は平均5万6千円※、中央値4万円と、多大な負担となっていることが分かった(※極端な回答を排除するため上下1割の回答を除外)。
 医療DXについて、協会や保団連に望む活動を聞いたところ、「電子処方箋をおおむね全ての医療機関で導入させることの阻止」65%、「標準型電子カルテ(共通算定モジュールと一体的に提供)の使用強制の阻止」58%、「医療DXへ対応する診療報酬の点数化・引き上げ」56%、「『全国医療情報プラットフォーム』への検査値・アレルギー・薬剤禁忌・傷病名等の入力の強要の阻止」54%、「医療DXへの対応に不安を感じている医療機関へのサポート」51%―となった(図7)。

医療DXは真の医療発展と
医業経営効率の改善に
厚労・デジタル大臣らに要望書提出

 アンケート結果を踏まえて、協会は1月17日、首相・財務大臣・厚労大臣・デジタル大臣・衆参厚生労働委員会委員・京都選出国会議員・中医協全委員に対して、以下の改善を求める要望書を提出した。
 @医療DXは真に国民の命と健康、医療の発展および医療機関の経営効率化に資するもののみを推進すること
 A医療DXを笠に着た資格確認・請求・審査に関する業務負担を医療担当者へ押し付けることはやめること
 Bオンライン資格確認の義務化を撤回すること。被保険者証は廃止しないこと
 Cオンライン請求の義務化を撤回すること
 D電子処方箋や「全国医療情報プラットフォーム(電子カルテ情報共有サービス[仮称])」への3文書6情報の共有化を医療機関に強制しないこと
 E保険医療機関は「療養の給付」を担当するのが役割であることを鑑み、医療DXの推進にあたって医療機関に協力を求める場合は保険点数ではなく、システム導入・保守のために恒常的に補助金を拠出すること

医療DXの推進に関する工程表

〜2023年
2024年4月以降〜
2025年〜
電子処方箋
実施する医療機関・薬局を拡大
おおむね全ての医療機関で導入
電子カルテ情報共有サービス(仮称)
整備
検査値・アレルギー・薬剤禁忌・傷病名等を共有
共通算定モジュール(クラウド型レセコン)
提供開始
標準型電子カルテ
提供開始
光ディスク等で請求する医療機関
オンライン請求を義務付け

第2回医療DX推進本部 資料3(2023年6月2日開催)より協会作成

図1 医療デジタル化の制度改定が実施された場合、医業を継続できるか
図2 対応困難と考えられる施策(複数回答)
図3 継続できない理由(複数回答)
図4 電子カルテ
図5 レセコン
図6 オンライン資格確認システム
図7 協会・保団連に望むこと(複数回答)患者さんに情報提供を

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