乗り鉄ドクの趣楽悠遊 vol.13 村上 匡孝(綴喜)  PDF

四国まんなか千年ものがたり
四国の真ん中を横切りまんねん (JR四国)

 5月の大歩危峡に舞う鯉のぼり。“アンパンマン南風”で来て、185系特急型気動車を改造した観光列車「四国まんなか千年ものがたり」に乗り込み、香川県多度津までの四国横断です(しあわせの郷紀行)。1号車は緑が基調の春萌はるあかりの章。2号車は徳島名産の藍染めの藍が基調の冬清ふゆすがしの章。3号車は色づく紅葉と果実を彷彿する橙色が基調の秋彩あきみのりの章(写真1)。和空間の地元食材の料理と、自然、里山、渓谷美を楽しむ「おとなの遊山」列車です。
 大歩危、小歩危の峡谷美を楽しんだ後は、“日本一の狸の里”阿波川口駅に降りて地元と交流します。続いて長いトンネルを抜けると阿波池田の(山から盆地に出て広がる)青空に感動。雄大なΩカーブと吉野川橋梁のダイナミックな名物鉄景を楽しみます。池田盆地の壮大な光景を左に観ながら列車はゆっくり登坂し、猪鼻峠を越えた坪尻駅で小休止。25パーミルの急坂の途中にあるスイッチバックの秘境駅で降りてマニアックな一刻を過ごせます(写真2)。
 発車後に列車は深い山中で停まり、運転士は最後尾の運転室まで車内を歩いて移動、列車は反対方向に動きます。このスイッチバックと前方展望が乗り鉄の悦び。その先、土讃線最長の猪ノ鼻トンネルを抜けると香川県。讃岐財田駅の樹齢700年超のタブノキが眩い。続いて穏やかな讃岐平野の田園の中を進めば次は琴平駅。こんぴらさん(金刀毘羅宮)の玄関の名物驛舎(文化財)を散策します。その先は、明るい瀬戸内の青空と緑の田圃の間を進み、弘法大師空海の生誕の地・善通寺駅。平野に盛り上がる五岳山や飯野山を眺めるうちに、讃岐鉄道発祥の地、多度津駅に到着しました(写真3)。
 緑、藍、橙の列車で、緑(森)、藍(川)、青(空)の車窓を楽しむ風雅。徳島の地元食材満載の和の三段重箱「おとなの遊山箱」の風情。粋な旅がたまらない。
 今回の推し地酒。悦凱陣 純米大吟醸 燕石(琴平、香川)、三芳菊 純米吟醸 白ぶどう(阿波池田、徳島)
 (四国まんなか千年ものがたり 2019年5月乗)

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