協会は9月16日、京都府内の各地区医師会長との懇談会をウェブ併用で開催。地区医師会から19人、協会から7人が出席した。「社会保障制度をめぐる差し迫った課題―医療DX・保険証廃止・第8次医療計画等を中心に―」をテーマに意見交換を行った。オンライン資格確認やマイナ保険証の利用状況、現行の保険証継続を求める意見などが出された。
開会に際し鈴木理事長は「2024年から25年にかけて医療は大きな変革を迫られる。第8次医療計画や地域医療構想、医師の働き方改革、4月の診療報酬・介護報酬等のトリプル改定などが一気に襲ってくる。オンライン資格確認やマイナ保険証の問題なども含めて取り組んでいきたい」とあいさつした。
医療現場でデジタル技術を活用し、医療の効率化や質の向上を目的として国が推し進める医療DXに関して、地区からは「医療DXは必要と思うが、国はデジタル化だけを目標にしており、トランスフォーメーションの部分が伴っていない。医療者側から提案して、使いやすいものにしていく必要がある」「ビッグデータを取り扱うビジネスモデルに目が行くばかりで、我々にメリットがないとの意見が多い。データが何に利用されているのか注視しなければならない」などの意見が出された。さらに、24年秋に保険証が廃止されることに対して地区から「マイナ保険証は国が補助金を出して進めたが、自院での利用者は月1~2人。国は保険証の代わりに資格確認書を発行するとしているが、現行の保険証を継続させるべき」との意見が多くの地区から出された。
協会からは「医療DXは医療者にとって使いやすい制度設計になっていれば良いが、企業などがどう活用できるかに重きを置いたシステムになっていることが大きな問題。マイナ保険証は期限があるため、更新が必要となる。余計な費用とトラブルが予想される。保険証の継続を訴えていきたい」と回答した。
働き方改革で地域医療の崩壊を危惧
24年4月から医師の働き方改革として、時間外労働の上限規制が適用される。これに対して地区からは「アルバイトができない医師がたくさん出るのではないか。以前、研修医がアルバイトすることが難しくなった時に病院の人員不足が生じた。24年4月以降の地域医療、特に夜間の医療体制を危惧している」との意見が出された。
協会からは「地域の病院に大学病院からのアルバイト医師が来れなくなるなど、地域医療に大きな穴が開くのではないかと懸念している。医師の絶対数を増やさない限り根本的な解決にはならない。地域医療を崩壊させない取組みが必要だ」と述べた。
その他にも、医薬品供給不足問題やインボイスなどの税制上の問題、悪質な人材派遣業者の対応など多岐にわたり意見交換した。