朝イチの特急サンダーバードで京都から金沢へ。IRいしかわ鉄道のラッピング列車に乗り継ぎ、倶利伽羅峠を越えて高岡へ。高岡から氷見までは氷見線の観光レストラン列車、べるもんた号に乗るのです。
「べるもんた」は略称で、正式名称は「ベル・モンターニュ・エ・メール」。フランス語で「美しい山と海」と命名された列車は国鉄時代のキハ40系をヨーロッパ調にリノベートした車両。窓は額縁のようにメイクされ、氷見線の海(城端線では山)の景色を額の中のアート(絵)に見立てています。瀟洒な気動車一両車両(写真1)の車内には沿線の伝統工芸「井波彫刻」や「高岡銅器」を用いた吊り革、「庄川挽物木地」の茶椀や「越中三助焼」の湯飲みなどの逸品がさりげなく並んでいて、まさに、走る地元特産名産工芸ギャラリーです。
かつては大きな機関区だった高岡駅の構内は広い。城端線から入って来たべるもんた号は、ユニークなデザインに包まれたキハ40型気動車が何両も並ぶ中を、南端の城端線ホームから北端の氷見線ホームへと、スイッチバックのように後退前進を繰り返して北陸本線を越えて移ってまいります。
「べるもんた」の売りは車内で食べる富山湾鮨(写真2)。発車後すぐから、乗り込んでいる寿司職人が車内で鮨を握り、その場で即食、速攻で賞味してゆきます。富山の地酒を合わせながら、舌なめずりをしながら、海を見ながら、ゆっくりしながら、飲み食いしながらの汽車旅が素晴らしい(写真3)。心地よい車両の揺れが、身も心も鮨と地酒と同調していい気で揺れ動きます。すると、車窓景色全面が海に。目の前は海満開です。通過したのは“伏木ふしき”という駅。なんとも不思議な感覚に陥りました。窓に面したカウンター席で目も舌も鼻も喉も同時に満喫した、一期一会の汽車旅でありました。
終着の氷見駅からは連絡バスで氷見漁港場外市場ひみ番屋街に行きます。そこで“きときと”の魚とともに午後のひとときを過ごし、その後はゆるりゆるりと町を散策しながら駅まで歩きます。氷見は藤子不二雄A先生ゆかりの地です。漫画のキャラクターやユニークな魚のモニュメントが通りのそこかしこに立っていて、楽しいかぎり。通りすがりに立ち寄った老舗和菓子屋さんの「もちパイ」がなんと美味しかったことよ。
今回の推し地酒。羽根屋 純吟 煌火 生原酒(富美菊酒造、富山)
(べるもんた 2021年6月乗)
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