主張 経営難で医療機関存続が困難にならぬよう物価高や賃上げを鑑みた基本診療料増が必要  PDF

 第2次岸田改造内閣が発足し、首相は物価高対策や構造的な賃上げ、人口減少を乗り越える社会改革に向けた経済対策を策定すると表明した。物価上昇率プラス数%の賃上げ実現を推し進めるとしている。大企業の賃上げに対する国の優遇税制、各企業の人材獲得競争を背景に、2023年の春闘で3%超の賃上げを実現し、最低賃金が京都も含めた8都府県で1000円を超えた結果、全国加重平均で1002円となる見通しである。物価高、石油・電気料金の値上げに加えて、人件費の支出が企業の経営に重くのしかかってくる。しかしながら、依然として「全く価格転嫁できていない」企業は1割を超えており、社会においても中小企業への負担増が予想される。
 医療機関での処遇改善の原資は診療報酬(特に基本診療料)しかなく、その上、材料費や光熱費上昇に対する支出も賄わなければならない。人手不足は深刻で、高い報酬を用意できる企業・業種に人材が集まり、医療・介護分野での人手不足はますます深刻になる。憲法25条にあるように、国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を持ち、国は社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならないにもかかわらず、経営難を理由に医療機関の存続が困難になってもよいのか国にあらためて訴えたい。
 24年の診療報酬改定は、介護報酬改定、障害福祉サービス報酬改定と重なり、財務省や厚労省は早くから三つの中で重複するサービスの効率化・一本化などの検討に入っている。現場の声が反映されない効率化により、新型コロナウイルス拡大時に多くの混乱が生じた。5類移行後、感染者数は増加しているにもかかわらず、10月からコロナ対応の加算は減額され、厚労省は24年4月以降の支援廃止を見据えている。我々医師をはじめ医療従事者は、安心安全かつ高水準な医療、介護サービスを提供するため日々努力している。一般企業は、価格の値上げのために付加価値の高い商品やサービスを提供する努力をしていると思うが、医療機関はどれだけ努力しても価格転嫁できないことはいうまでもない。協会は診療報酬改定に際して、将来的な物価高や賃上げも鑑みた初・再診療、入院基本料の基本診療料の大幅引き上げを要求する。

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