漢方で「気」「血」「水」のバランスを産婦人科診療内容向上会開く  PDF

 協会は産婦人科診療内容向上会を8月5日にホテルオークラ京都で開催した。京都産婦人科医会とクラシエ薬品株式会社との共催、ハイブリット形式で開催し、参加者は会場24人、ウェブ87人。京都産婦人科医会理事で支払基金京都支部審査委員の井上卓也氏が「保険請求の留意事項と最近の審査事情」を解説。慶應義塾大学医学部漢方医学センター医局長の堀場裕子氏が「女性の日々の不調に対する漢方」について講演した。

レポート 井田 憲蔵(山科)

 京都産婦人科医会の柏木智博会長と保険医協会の鈴木卓理事長よりあいさついただいた。柏木先生は府内の分娩件数の急激な減少と、出産費用の見える化・保険化についての不安と懸念について話された。
 井上先生より保険医協会アンケートの集計結果とレセプト作成における留意事項について講演いただいた。集計結果の中で、審査のAI化ではAIで疑義抽出し、その後事務員・審査委員による審査が行われる点、返戻に関して医療機関からよりも保険者からの再審査請求が圧倒的に多く、その多くに対し算定される方向で審査しているとのことであった。レセプト作成の留意事項の中で、術前検査のHIVは認められなくなったこと、病名として症状名は不適切なので具体的病名をつけること、ガイドライン記載と算定との相違が場合によってあること、超音波検査について回数や病名に留意して適正に申請することなどが挙げられた。
 堀場先生からは月経に関する症状や更年期の精神不調に対する漢方療法について、実際の症例を交えながら講演いただいた。身体は「気」「血」「水」のバランスが保たれていることが大事であるが、ストレスにより乱れると日々の不調の原因となる。月経痛は「血」の乱れが原因となっており、血流をよくして痛みを和らげることが大事であるとのこと。その方剤として桂枝茯苓丸や桃核承気湯、きゅう帰調血飲が挙げられた。
 特に便秘のある女性には桃核承気湯が、月経不順を伴う若い女性には「気」「血」を補うきゅう帰調血飲が勧められるとのこと。また月経トラブルに対する漢方療法は、最低3カ月は続けて様子を見るのがよいとのことであった。更年期の鬱々とした気分に対し、柴朴湯を挙げられた。柴朴湯は小柴胡湯と半夏厚朴湯の合方でストレス性の咳や呼吸器疾患、鬱気分による喉の異常感に有用である。
 最後にコロナ禍の女性の不調に関連して「疲れやすい・倦怠感」に対する方剤として加味帰脾湯と人参養栄湯が挙げられた。どちらも「気」と「血」を補い健胃の生薬を含んでいる。人参養栄湯にはさらに鎮咳作用のある生薬を含むため、呼吸器疾患のある方にも有効とのこと。漢方によって「気」「血」「水」のバランスを保つことで健康を維持する大切さを教えられた。両氏の講演により得られた知識を今後の診療に役立てていきたい。

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