人手不足が慢性化するも 物価高で賃上げ困難 税理士との懇談会開く  PDF

 協会は協力税理士との懇談会を7月6日に開催。2022年分確定申告や医療機関への税務調査状況、インボイスと物価高騰による医療機関への影響、保険証からマイナンバーカードへの移行状況などで意見交換した。出席者は鴨井勝也、柴田陽一郎、廣井増生税理士、外村弘樹、山口美賀公認会計士。
 協会から 保団連近畿ブロックでの税務調査アンケート実施 自治体への医療機関支援策実施の要請と市町村の独自支援策の調査結果 オンライン資格確認に関する協会代議員調査結果―を報告した。
 税理士からは、22年分の確定申告状況においてコロナ患者や発熱患者の受け入れの有無で、医療機関の収益の二極化が継続している。給与総額が増加した医療機関が多く、以前の所得拡大促進税制である「給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除」(表)の適用を受けられる医療機関が増えたことなどが述べられた。
 人材確保で悩んでいる医療機関が多く、従業員の時給を上げているところが多い。一方で時給が上がると扶養控除の関係で働くコマ数が制限され、結局人手不足となる。こうした状況が慢性化していることもあり、退職者が出た場合の人員補充は以前にも増して困難な状況である。また、産業界全体は賃上げ傾向であるものの、医療機関は物価高騰分を転嫁できず、賃上げ自体が難しいとした。
 その他の実務では、支払基金からの年間支払調書が2月27日に到着したことで、確定申告の作業進捗に大きな影響があったことなどが報告された。これを受け、協会は最終的に会員医療機関の不利益につながるのではないかと懸念。9月19日に社会保険診療報酬支払基金京都審査委員会事務局へ早期送付の検討を要望した。
 税務調査は再開されたが、医療機関への調査はまだない。調査自体も実地調査の経験が浅く若い調査官とベテラン調査官で来ることが多く、調査の練習のように感じたと複数の税理士から声が上がった。
 オンライン資格確認への対応では、顧問先の多くが最終期限ぎりぎりでの移行だったことや業者の対応が追い付かず、予定通り進まない医療機関が数件あったことが報告された。また、機器は導入したものの、積極的に利用を促していない医療機関もある一方、若い世代の医師は電子化を進めているとした。
 インボイス制度では、医院は特に対処すべき事項はないと積極的に登録申請は勧めていない。一方で病院は対応が必要で、会計システムのアップデート、職員研修などを実施していると報告があった。

給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除
青色申告書を提出する個人が2022年から24年までの各年において、国内雇用者に対して支払う給与等支給額が適用年の前年の給与等支給額に比して一定割合以上増加した場合に、税額控除が認められる
23・24年分の税額控除限度額(中小事業所)
その年の控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額。ただし、次のイおよびロの要件を満たす場合にはそれぞれの割合が加算

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