新型コロナウイルス感染症が5月8日より5類に移行し、平時への移行が進められている。感染状況が見えにくくなるなかにあっても、私たちは国民の生命を守る対策と医療提供体制を整えていかねばならない。
一方で、私たちが懸念していた重要法案が2023年の通常国会で次々と成立した。
一つは、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」を含む全世代社会保障法(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律)である。かかりつけ医機能の定義を法定化し、国民への情報提供の強化や、新たな機能報告制度を創設するものである。今回は、性急な患者登録型のかかりつけ医制度導入に至らなかったが、今後この制度が医療構造改革で狙われてきた開業規制やフリーアクセス制限につながらないよう引き続き注視してゆくことが必要である。
二つ目は、健康保険証を廃止する「マイナンバー改定法」である。マイナンバーを巡っては情報漏洩や誤登録のトラブルが相次いで発覚したが、その実態解明も行われないまま成立が強行された。マイナンバーカードを普及させるため、あまりに健康保険証廃止、オンライン資格確認義務化を急いだことにより医療現場がますます混乱することが懸念される。その根幹たる医療DX(デジタルトランスフォーメーション)では、大量の個人情報が収集・集積されるだけでなく、社会保障給付抑制への利活用や、国民を監視する社会システム構築へつなげられることも可能になる。であればこそ、国民の機微な情報を守る体制構築と透明性の確保が不可欠である。
さらにウクライナ危機を背景に、専守防衛というこの国のかたちを変える敵基地攻撃能力を保有することとし、防衛費を5年間の総額で43兆円程度とする大幅増額を裏付ける財源確保法を成立させるとともに、原発の60年超運転を可能にする束ね法「GX脱炭素電源法」を成立させた。このような大転換が国民的議論どころか丁寧な説明さえ行われず強行されたことは遺憾である。防衛費の大幅増額は国民生活への影響も必至で、更なる医療・社会保障費の削減が進められようとしている。
このような情勢であるからこそ、国民皆保険体制を強化しより良い医療体制構築を目指して、以下を決議する。
一、新型コロナ「5類」移行後も感染拡大時に対応できる体制を整えること
一、自由開業規制やフリーアクセス制限につながるかかりつけ医制度化を行わないこと
一、誰一人医療から取り残されないよう現行の健康保険証は残し、オンライン資格確認義務化を行わないこと
一、より良い医療体制構築を目指し、社会保障費の充実を図ること
一、診療報酬の改定にあたっては、入院料、初診・再診料などの基本診療料の引き上げを中心にして医療費総額を引き上げること
一、国民的議論を行わずに「原発回帰」、「防衛費の大幅増額」をしないこと
2023年7月30日
京都府保険医協会
第76回定期総会
(第205回定時代議員会合併)