談話 経済財政運営と改革の基本方針2023について  PDF

 2023年6月16日、経済財政運営と改革の基本方針2023が公表された。
 骨太の方針は小泉政権期に各省庁の利害を超えて新自由主義改革を推進するため、予算編成に向けた政権の重要課題や基本方向の方針書に位置付けられた。当時の方針は日本政治の基本思想が新自由主義改革であることを明確に謳った。すなわち市場競争の障壁となる規制の撤廃や歳出抑制を通じ、グローバル大企業の利益に資するよう国家構造を解体的に見直すものであり、それは今日のDXに至るまで一貫している。
 方針策定にあたる経済財政諮問会議は首相はじめ主要閣僚と主に財界代表者で構成される。国家方針をかような陣容で国会議論も経ず閣議決定のみで策定することの正当性は疑わしく、民主主義を蔑ろにするものと言わざるを得ない。
 さて今年度の方針も医療・社会保障へ深刻な影響を与えるものとなっている。
 たとえば2024年度に予定される診療・介護・障害の報酬改定について「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う」とされる。原案が「抑制の必要性」と書かれていたのに比べればソフトな表記に改められてはいるが、診療報酬の引き上げ要求を強くけん制している。また「1人当たり医療費の地域差半減」に向けた医療提供体制改革があらためて強調され、地域医療構想・医師偏在対策とともに「かかりつけ医機能が発揮される制度整備の実効性」が謳われている。同時に混乱に陥る「マイナ保険証」推進を通じた「医療DX」も無反省に強調されている。
 一方、2023~2027年度で合計47兆円もの防衛費拡大や「少子化・こども政策の抜本強化」に加え、経済財政一体改革も引き継がれている。医療・社会保障は拡充どころかそれらの財源捻出に向けた歳出抑制の標的となる。
 もちろん少子化対策・こどもたちのための施策推進は必要である。だが、その財源捻出のために医療・社会保障水準を後退させることはあってはならない。さらに防衛費増額が真に人々の生命を守るためのものなのかは疑わしい。2022年11月の諮問会議では民間議員らが「防衛力と経済基盤の一体強化に向けた防衛政策の方向性」において、「装備品や技術の調達」は「自国で備える能力を高めることが重要」であり「我が国の民間活力の拡大」に資するものとするよう求めている。防衛力強化さえ企業利益増大につなげようとする発想そのものが新自由主義改革の本質といえるのではないか。
 今年度の骨太の方針はあらためて医療・社会保障制度を拡充し、すべての人が普遍的に生命と健康を国家によって保障される制度の実現には、国の政治の根本思想を転換することが必要であることを明らかにした。引き続き私たちは医療者として国の政策に注視し、あるべき国と社会保障の姿を提言していく所存である。
2023年7月5日
京都府保険医協会
副理事長 渡邉賢治

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