目指すのは怒りの抑制でなく 衝動と思考、行動のコントロール 医療安全講習会  PDF

 協会は4月1日、横浜市立大学医学部看護学科の精神看護専門看護師、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定アンガーマネジメントファシリテーターRの田辺有理子氏を講師に、「安全な医療を提供するためのアンガーマネジメント」をテーマに医療安全講習会をウェブで開催した。本講習会では、全国の保険医協会・医会会員医療機関から234人が参加し、怒りの原理やコントロール方法など基礎的な部分を中心に解説した。
 田辺氏は冒頭、アンガーマネジメントとは怒りを抑制する方法ではなく、怒りによって後悔しないことを目指すものであると述べ、衝動的に激しく怒ってしまったことによる後悔や、相手に怒りの気持ちを言えず後悔することがあり、そういった後悔をしないように怒りをコントロールすることが重要であるとした。
 そもそも怒りとは自分の身を守るために必要な感情であり、自分の中の「こうあるべき」という価値観と事象との間のずれによって生じる。したがって、他人の言動や出来事そのものが原因になるわけではなく、怒るかどうか、また、どのように怒るかを決めるのは自分自身であると説明した。
 次に、怒りのコントロール方法について解説。反射的に怒りを表出させないための衝動のコントロールや、自分の中の「許せる」範囲をできる限り広く一定に保とうとする思考のコントロール、状況に応じて怒る必要があるかを選択する行動のコントロールを紹介した。また、上手な怒り方とは、感情的に相手や物を傷つけるのではなく、自分の「こうしてほしい」という気持ちを言葉にして相手に伝えることであると述べた。
 最後に、怒っている患者への対応として、医療者は患者が訴えている事柄についてのみ回答するのではなく、患者の背後にある感情を踏まえて対応することで、大きな怒りにつながりにくいとアドバイスした。
 講演後の質疑応答では、暴言を吐く患者や怒りっぽいスタッフへの対応方法、医療事故と怒りの関係性などについて質問が寄せられ、アンガーマネジメントについての関心の高さがうかがえた。

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