日本の「かかりつけ医機能」実現に必要なものは 医療制度学習会を開催  PDF

 協会は「国際比較から考える『かかりつけ医』制度」と題して、医療制度学習会を2月21日にウェブで開催した。講師は立命館大学教授・松田亮三氏。23人が参加した。

 松田氏は、はじめに今後の日本の医療は高齢・多死社会の下で在宅医療ケアに対するニーズが高まると指摘。さらに、プライマリ・ケアの担い手も高齢化するため大きな転換期を迎えるとした上で、いくつかの考えるべき視点を示したいとした。

かかりつけ医機能の制度化
 現在開会中の国会で、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改定する法律案が審議されている。かかりつけ医機能として、①外来医療の提供②休日・夜間の対応③入退院時の支援④在宅医療の提供⑤介護サービスなどの連携が挙げられている(図)。
 松田氏は、かかりつけ医機能を医療提供体制構築に取り入れていく際のポイントとして「休日・夜間の対応」を挙げ、イギリスの例を紹介した。イギリスでは平日夜間や休日は時間外専門サービスが対応する。GP(General Practi-
tioner:一般開業医)や看護師などのプライマリ・ケアチームによる外来・電話相談・在宅医療などを24時間年中無休で提供する。医療機関単独ではなく、地域のチームで「休日・夜間の対応」のニーズを満たすシステムは、日本でも参考になるとした。

患者中心のプライマリ・ケア
 次にプライマリ・ケアの国際的な考え方として、患者中心のメディカルホーム(Patient-Centered Medical Home:PCMH)を紹介。PCMHはプライマリ・ケア医(かかりつけ医)が主導・指揮する多職種連携チームで、患者のヘルスケアニーズの全てに対応する。患者の希望するケアをコーディネートし、質と安全を高めて円滑に実施する。PCMHの考え方を導入してプライマリ・ケアを進めれば、診療のアウトカムの向上につながることは明らかだとした。具体的には、入院回避などの医療費抑制、経済的理由で医療を受診できないことから生じる健康格差の解消が期待される。
 続いて各国のプライマリ・ケア制度を紹介。国際的にプライマリ・ケアは重要という認識が浸透しているが、どう進めるかへの明確な方法はなく、各国で試行錯誤している状況だという。

「効率的」な医療
 医療の仕組みを財政面からも解説した。1970年代以降、医療は公共政策として取り上げられるようになり、必然的に財政面で「効率的か」という点で厳しく見られるようになる。つまり、税金の使用方法として医療が効率的であるかという視点である。その他、患者の尊重と意思決定、医療従事者の実施・説明責任、医療受診の格差縮小が求められている。だが、医療が全体的に効率化したかを数字で示すことは難しい。松田氏は、医療従事者や患者が納得できる仕組みで医療が実施されているかが重要になるとした。また、かかりつけ医機能は、今後取り組みの中で子細に見ていく上でしか最終的な評価はできないとした。
 最後に松田氏は、今後の社会的ニーズに対し、開業医は専門職を徹底していくか、事業家として展開していくかのいずれかに軸を置くよう求められるのではないかとした。同時に、団体、チーム、あるいは医師集団として何を目指していくべきかも重要な課題であるとし、保険医協会も社会的ニーズに関わるような提案をしていくべきだと述べた。

図 地域におけるかかりつけ医機能の充実強化に向けた協議のイメージ
出典:第95回社会保障審議会医療部会(2022年12月23日)資料

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