こんな事態をいつまで繰り返すのか。精神科は特殊な世界だとして済ませるのか。
精神科病院での患者虐待が、またもや発覚した。
滝山病院(東京)で、看護師の1人が患者への暴行で逮捕され、罰金刑を受けた。もう1人も書類送検された。
病院の実態をNHKの取材チームが暴いた。暴言を浴びせるスタッフ、大きな床ずれのできた患者。違法拘束、過剰医療の疑いも浮かんだ。
滝山病院は、人工透析の必要な患者を含め、首都圏の広範囲から入院を受け入れてきた。生活保護の患者がほぼ半数を占め、死亡退院率が6割超と突出して高い。
院長は2001年に違法行為や診療報酬の不正が発覚して自主廃院した朝倉病院(埼玉県)の院長だった。この時も大半が住居のない生活保護の患者。軒並み、身体拘束して中心静脈栄養を行い、大部屋の病室で3人にがんの手術をして死なせていた。
2020年には神戸市の神出病院で虐待が発覚した。ホースで水をかける、ベッドを上下逆にしてかぶせる、男性患者同士で性器をなめさせるといった行為で、看護職員6人の有罪判決が確定した。
他にも精神科病院の職員による暴力、虐待、患者の金銭の着服は、最近10年間に報道されただけで20件を超す。個々の職員の資質や差別意識だけでなく、タチの悪い病院がいまだに存在する。
精神科病院には、人権侵害が起きやすい理由がある。
①強制入院、隔離、拘束、外出・面会・電話の制限などが法律で認められている。
②日常生活のルールを含めてスタッフの権力が大きい。
③看護職員は個別のケアより集団管理を重視しがち。
④病棟の多くが閉鎖的で、外部の目が入りにくい。
⑤病院の大半が民間で、営利優先に傾くことがある。
⑥医師、看護職員の配置が少なく、人手が足りない。
入院患者の側にも、虐待を受けやすい状況がある。
⑦訴える力が弱い。病状や薬の影響で意欲の低下している人、論理的主張の難しい人、言葉の出ない人もいる。
⑧逆らわない方が賢いことを学ぶ。入院が長引くほど無力感、あきらめが強まる。
⑨支援者が乏しい。家族も味方とは限らない。
社会や行政の問題もある。
⑩他に行き場がない。退院を支える福祉や住宅の不十分さ、身体合併症のある患者を受け入れる病院の不足。
⑪医療行政の監督の甘さ。
⑫入院させておけば手間がかからなくてよいと考える生活保護行政の姿勢。
何をすべきか? 滝山病院の実態調査、患者の救済、そして多角的な再発防止策が必要だが、ここでは根本問題を提起しておきたい。
強制入院や身体拘束などの人権制限を、民間病院にやらせていてよいのか。
日本精神科病院協会の山崎学会長は昨年5月の厚労省の検討会で「精神科医療は政策医療と位置づけ、全て国営化したらどうか」と発言した。
やれるものならやってみろという趣旨だが、結論は大賛成である。少なくとも強制を伴うような医療は、国営・公営にしようではないか。
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