主張 救急搬送困難事例が高止まり かかりつけ医としてできることは  PDF

 コロナ禍は表面上やや落ち着いているかに見えるものの、京都市内の救急搬送困難事例(搬送先の選定に時間を要するもの)は現時点でも高止まりしている現状である。
 そんな中、京都市内の某救命救急センターの時間外受診に、「選定療養費」を4月3日の通常診療終了後より実施する旨のお知らせが近傍の医療機関に届いた。ただし、救急搬送患者、受診後入院、他院からの紹介状持参患者等々は、徴収対象外となると明記してある。
 「救命救急センター」が「生命危機を伴う最重症患者を受け入れる最後の砦」であることは、医療関係者であれば等しく理解しているところだが、中等症までと思われる症例も救命センターが多数受け入れているのが現実である。従来は比較的恵まれた環境下にあった京都市内の救急事情がコロナ禍により様変わりし、その結果、冒頭に述べた救急搬送の困難な事例が、現時点においてもなお少なくない事態が続いている。
 ちなみに、診療報酬点数の時間外加算などは 時間外等であることに加えて 医療機関が診療応需体制を解いている(入口に施錠してカーテンを下ろし、受付などの人員配置も解いている)状態の時に算定可能となっている。救命センターを擁する基幹病院などに、診療時間を過ぎても間断なく外来患者が来た場合、算定が難しくなる。
 さらには、「診療応需義務」の観点からも受け入れ症例を篩にかけることは困難である。これら諸般の事情から今般の「選定療養費」の徴収に至ったものと推察され、苦渋の選択をされたものと考えられる。
 振り返って「かかりつけ医」としてできることを考えてみると、例えば自院の通院患者であれば、通常と異なる症状への不安に対して、電話などの方法でも一定の重症度判定が可能であるかもしれないし、この点にこそ「かかりつけ医」の役割の一端がありそうに思われる。その結果として、搬送困難となる救急事例が少しでも減少することにつながるのではなかろうか。

ページの先頭へ