民主主義とか民主的とか、よく言うけれど、それってどういうことだろうか? 多数決が民主主義? そんな話じゃないよね。実はけっこう、あやふやではなかろうか。
民主主義の字義通りの意味は、人民が主権者。つまり決定権を持つ主人公は人民であって、君主や独裁者や特権階級ではないということだ。
ここでは政治のシステムや法制度はいったん横に置き、いろいろな組織・団体の運営を念頭に、民主的と言える条件は何かを考えてみよう。
〈1〉特定の人やグループが権限を握るのではなく、全員が決定に参加できる。
〈2〉メンバーの発言権・決定権が平等である。
〈3〉結論を決める前に話し合いが十分に行われる。
〈4〉多数決で決めた場合でも、少数意見の人を尊重し、否定・排除しない。
〈5〉多数決で決めてはいけないことがある。基本的人権、メンバーとしての基本的な権利は、よほどの理由がないと制限できない。
これらの中で最も大切なのは、話し合いのプロセスだ。ルールだけでなく、実質的にどうかも問われる。特定の人の発言力が大きい、発言することで不利益を受けたり関係が悪化したりする。それではもちろんダメだ。
▽執行部は提案の内容と理由をきちんと説明する▽議題や提案を含め、メンバーが自由に意見表明できる▽執行部以外の提案や意見も、その内容が他のメンバーに共有される▽他の人の意見に耳を傾ける――などが重要だろう。
なるべく多くのメンバーが多様な提案や意見を出し、意見交換することで、より良い結論を探ることができる。
説明するうちに自分の考えが整理されたり、アイデアが浮かんだりする。他の人の話を聴いて気づくことがある。
対話、意見交換は知恵や創造性の源泉になる。
ただし、組織の規模や参加メンバーの人数が大きいと、時間や場所の制約から、十分な討議ができなくなる。
そこで代議制、つまり一定数の代表者を選び、代表者の中で話し合う方法(間接民主制)がしばしば採用される。
これは議論を深めるにはいいが、いくつか課題がある。
組織の運営状況、課題や議論の状況が、一般のメンバーにとって見えにくくなる。それでは参加感を持ちにくく、活力が低下する。
また、代議員会で上のレベルの代議員を選ぶ「多段階の間接民主制」だと、少数意見は上の段階ほどレアになり、討議に反映されなくなる。
これらの弱点を補うには、議題、議決事項、主な議論を可能な範囲でメンバー全員に伝えるとともに、メンバーなら誰でも参加できる意見交換の場を設けるとよい。メール、SNS、オンライン会議など通信手段の発達で、これらはやりやすくなった。
議決機関と執行機関が実質的に一体化しがちな傾向、運営状況を点検する監事などの独立性の不足、内部ルールの解釈や判定を行う司法的機能の不備といった課題もある。 組織が大きくなれば外部からの視点も必要だろう。
どうすればより民主的か、まだまだ開発途上である。
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