改訂版 医療安全対策の常識と工夫(76)
「医療安全を科学する」姿勢で
ここでは、少し京都府保険医協会の医療安全対策についての理想・理念についてお話ししてみようと思います。
協会が医療安全対策に着手したのは、今から半世紀以上も前の1959年のことでした。過去の資料を見ると、当時の諸先輩方が試行錯誤しながらも、いかに現在の体制基盤を確立していったかがよく分かります。そして、21世紀の医療の一端を担う我々も、その歴史の重さと実績に今更ながら身の引き締まる思いです。
この問題に対する協会のスタンスは「医療安全を科学する」ことです。言い換えれば、個々のケースを「不幸な出来事」で終わらせずに、あるいは「取りあえず解決する」だけではなく、可能な限り一定の傾向・法則・ルール等を見つけて、更なる安全を目指し対処していく地道な作業を続けることです。
もちろん、言うほど生易しいことではありません。医事紛争には科学が最も介入し難いであろう「人の心」が、常に大きく介在しているからです。それでも、この「人の心」を大切に扱うことで、事故や紛争を乗り越えて、医療機関を守り、医療者と患者さんがより良い医療を実現する、パートナーとしてのスタートラインに戻ることもできるのだと思います。
協会の医療安全対策は確実に進歩しています。そして、その進歩を約束してくれるのは、会員一人ひとりと協会との信頼関係にあります。これからも協会は得られた情報を吟味する力を保ちながら、会員・医療機関と共に、時には茨の道をも歩んでいこうと思います。 (おわり)