高齢者施設見学レポート 留め置きの現場から  PDF

 協会は、この間取り組んでいる高齢者や障害のある施設入所者が新型コロナに感染しても入院できずに生命を落とす問題(留め置き死問題)について、施設の実態を知るため、京都市内の介護老人保健施設を1月12日に訪問した。
 同施設は110床の入所(短期入所含む)とデイケア(通所リハビリテーション)が併設されており、職員数は介護・看護・リハビリ・事務など含めて110人。1階がデイケアルーム、家族との面談スペースが設けられ、2・3階が居室、4階がリハビリスペース。2階は認知症専門棟である。施設は多床室(4人部屋)が基本で、個室は数室のみ。福祉施設は「寝食分離」を目標とし、可能な限りベッドから離床して食事ができるように支援している。入所者が孤立せず、交流しながら生活できる設計となっている(図)。
 コロナ禍では多床室の入所者が感染した場合、隔離するための個室数が限られているため、居室移動ができない方もいた。クラスター発生時には、食堂は使用せず、入浴やリハビリテーションも感染リスクと体制確保のため中止。リハ職も含めたスタッフ全員で体調観察や食事、排泄、清拭等の支援を行った―など事務長に施設内を案内してもらいながら説明を受けた。
 昨夏、コロナ感染した入所者の体調が悪化するも、すぐに入院できずに苦労した事例も聞き取りした。当初、血中酸素飽和度が低下、基礎疾患があり入院を希望したが、DNR(蘇生措置拒否)や施設内で点滴・投薬できること等を根拠に京都府入院医療コントロールセンターが「入院不可」と判断したと保健所から伝えられた。その後施設内で点滴・投薬するも容態が悪化し、このままでは生命の危険に至るとして、救急要請し再度入院希望を訴えた。駆けつけた救急隊員はじめ施設職員が「回復見込み」があることをセンターに伝え、なんとか入院につながった。この入所者はその後回復し、今は施設で過ごしている。
 施設はあくまで生活の場で、療養できる設備や人員体制になっていない。コロナ禍での施設ではこれまで想定していなかった医療ニーズが高まり、限られた介護報酬の中では創意工夫しなければ、感染対策をして、入所者の生活を守り、職員の働く環境を維持することはできない。
 誰もが医療を必要とする時に医療を受けられるよう、協会はコロナ禍のこれまでの医療提供体制の検証と対策を国や自治体に引き続き求めたい。

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