新型コロナワクチンの接種事業が開始されて以降、消費税課税事業者となる医療機関が増加傾向にある。これを受けて、柴田陽一郎税理士に留意点を解説いただいた。
◇ 寄 稿 ◇
新型コロナワクチンの個別接種が2021年(令和3年)より始まっております。接種に伴い、消費税の課税関係が変更になっている医療機関があります。
あらためて新型コロナウイルスの個別接種に係る医療機関の収入に対する消費税の課税関係を説明します。
新型コロナウイルスワクチン接種対策費負担金(いわゆる接種の費用)につきましては、医療機関において消費税の課税売上となります。これとは別に、個別接種促進のための支援策として一定回数以上の接種を行う医療機関に支払われる補助金については、消費税の課税対象外となっております。
これまで自由診療等の課税売上高が年間1000万円以内のため免税事業者であった医療機関が、ワクチン接種の収入が増加したことにより年間の課税売上高が1000万円を超える場合、原則としてその超えた年の翌々年から消費税を納める事業者となります。
21年につきましては、新型コロナワクチン接種の開始により自由診療収入等の課税売上が増加傾向にあり、年間の課税売上が1000万円を超える場合、原則として23年より課税事業者となります。このことは21年が終了した段階で把握されている医療機関が多いかと存じます。
では、納付額の計算に向けて、何か検討しておくべきことはあるでしょうか。
消費税の納付額は、預かった消費税から支払った消費税を差し引きして納付額を計算します。この計算を行うためには、少々複雑な記帳や申告、書類の厳密な保存といった事務負担が伴ってきます。
この事務負担を軽減する方法として簡易課税制度を利用することも可能です。
この制度を利用しますと、実際に支払った消費税の集計が不要になり、預かった消費税に一定のみなし仕入れ率を乗じた金額を支払った消費税とみなして納付額を計算することができます。
ただし、簡易課税制度を利用するには、簡易課税制度を選択する旨の届出書をあらかじめ所轄税務署長に提出する必要があります。その期限が22年12月31日までとなりますので、注意が必要です。
最後に、簡易課税制度を選択する場合、事務負担は軽減されますが、実際に納付する消費税額が軽減されるかどうかは各医療機関の状況によって変わってきます。事前のシミュレーションや過去の届出状況の把握が重要ですので、早めの確認をお願いいたします。