感染症対応体制の抜本的強化を
開会中の国会で、「感染症法等の一部を改正する法律案」が審議されている。施行日は2024年4月で、新型コロナウイルス感染症に限定せず、今後襲来し得る全ての新興・再興感染症等を対象とする。
法案では、医療機関と都道府県との間に新たな協定締結の仕組みの導入が検討されている。協定は、病床、発熱外来、自宅療養者に対する医療の提供、後方支援、人材派遣のいずれか1種類以上の実施を想定する。全ての医療機関に対して、協定締結の協議に応じる義務を課し、協定に従わない場合のペナルティも盛り込まれた。
なお、医療機関に対する財政支援について、法案の示す内容は極めて不透明である。感染初期の特別な協定を締結した医療機関には、「流行初期医療確保措置」として診療報酬と補助金による補てんが示されているものの、一定期間経過後の補助金・診療報酬上乗せについては一般的な記載があるだけで、具体的内容は不明。
3年におよぶコロナ禍での医療ひっ迫の根本原因は、病床数・医療従事者などをはじめとした医療・社会保障費の抑制政策にある。これらの総括がないまま、感染症対応体制の抜本的強化の実現はない。
感染症法は患者への「良質かつ適切な医療の保障」を国の責務としている。コロナ禍では医療にかかることができずに多数の国民が生命を落とした。協会は、感染症に罹患した患者を確実に医療へつなげ、死亡者ゼロを目指す法改正を求め、「感染症法等の一部を改正する法律案の再検討を求める意見」を内閣総理大臣、厚生労働大臣、京都選出国会議員、参議院厚生労働委員へ11月8日付で提出した(表1)。
インフル・コロナ同時流行
医療体制の強化を
国は10月17日付の「季節性インフルエンザとの同時流行を想定した新型コロナウイルス感染症に対応する外来医療体制等の整備について」(事務連絡)で、保健医療体制の強化・重点化として、発熱外来は重症化リスクの高い患者と小学生以下の子どもの患者に制限し、その他の患者は検査キットで自己検査を行うよう示した。陽性の場合は、自ら健康フォローアップセンターに登録して自宅療養する。陰性であり、受診を希望する場合は電話診療やオンライン診療を受け、医師の診断により抗インフルエンザ薬の処方が可能としている。
新型コロナウイルスはいまだ不明な点が多く、健康な若年世代であっても急変し、生命を落とす危険性がある。協会は、外来医療受診にハードルを設けず、すべての患者が確実に必要な医療につながることを求め、11月17日に京都府へ「新型コロナウイルス感染症第8波を見越した医療体制の強化等を求める要請書」を吉中理事より提出した(表2)。
吉中理事は府に対し、デイサービスのクラスター発生で感染した患者が自宅療養後に受診した事例を紹介。医療からこぼれ落ちている患者への早急の手立てが必要だと訴えた。また、全数把握の見直し以降、府の自宅療養者数が公表されず、国に報告される社会福祉施設等の療養者がゼロとなっていることに触れ、実際にあるものをなかったことにしてはならない、参考値でも一定の根拠を基に示すべきだと要望した。長引くコロナ禍で、府の入院医療コントロールセンターのあり方を考え直す時期が来ているのではないかと指摘した。府担当者からは関係部署と共有したいと回答があった。
表1 感染症法改定案への意見内容
1. 法改正は新興感染症に罹患した患者に対し、「確実な医療の保障」を行い、いかに死亡者をゼロにするかを目的に行うこと
2.必要とするすべての人が医療につながることのできる目標設定とすること
3.対応不能な体制を改善しないまま、医療機関に責任を押し付けてペナルティを科すような仕組みは導入しないこと
4.感染症法等見直しにあたり、医療確保・公衆衛生政策の再建策を実施すること
表2 京都府への要請内容
1.外来受診へのハードルを設けず、自治体と医療者の協働ですべての人へ必要な医療を確実に保障していただきたい
2.高齢者・障害のある人たちの施設での「留め置き死」の解消へ尽力いただきたい
3.全数把握見直しによって後退した新規陽性者にかかるデータ公表の充実をお願いしたい
4.病床確保料の見直しについて、府独自の補てんも検討いただきたい