日本の医療政策が、2019年から新型コロナ感染症が流行して以来、特に混乱の度を深めている感が否めません。厚生労働省の人口動態統計によると22年1月から3月に約42万人が死亡し、前年21年より約3万8000人も増加しています。その死亡原因は、新型コロナ感染症による死亡のほか、医療機関に入院治療を受けてもらえないで死亡した人や持病が悪化した症例や困窮世帯者などが少なからず含まれています。
米国ワシントン大学が医学雑誌『ランセット』に発表したところによると、日本の超過死亡数は11万1000人(20年1月から21年12月)と推定され、新型コロナ感染者によるものと確認された1万8400人の6倍に及んでいます。その原因は医療逼迫で病床にアクセスできなかったのではなく、「長期の自粛により持病を悪化させた高齢者が多数であった」ということです。
この事実が日本経済新聞(22年10月16日付)に大きく報道され、22年1月から3月の間で「循環器系疾患」で約1万人(10%)増加しており、「老衰」も約8000人(21%)増加しています。要するに新型コロナ感染症対策として国民に過剰な自粛生活を強いたために、結果として国民の生命を奪っている可能性があるということです。ここに地域リハビリテーション体制の重要な意味を見出すのです。
近年、医療費が削減され、特に在宅医療の分野における各種の制限が国民生活を締め付けています。合理的な在宅リハビリテーションが、ことのほか重要な時期にきていると思います。地域におけるリハビリテーションが充実し、地域に対するリハビリテーションへの支援が行われないと、急速に高齢化する社会の中で、国民の命はますます失われていくことを、我々はしっかりと認識しなければなりません。
やはり、新型コロナ感染症の対策として行動制限を実施する場合には、特に高齢者や身体障害者などの在宅生活に対する配慮と適切なリハビリテーション活動が重要であると思います。
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