現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると、河野太郎デジタル相が10月13日に発表した。法的には任意のカード取得を、生命に関わる保険証を使って事実上義務化し、強制することは到底容認できるものではなく、撤回を求めたい。
岸田政権は骨太方針2022に「2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、さらにオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止を目指す」と書き込み、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を重点政策に掲げた。その狙いについて協会は、個々人の医療情報を民間企業に利活用させ「経済活動」の道具とすることを目指し、さらに国家が個々人の医療情報をすべて把握することで、「負担」と「給付」の関係を管理し、医療費抑制政策に役立てることにあると指摘してきた。
強引な手法で急ぐのは、マイナ保険証こそがその医療DXの基盤であるからに他ならない。医療機関には 2023年4月からオンライン資格確認が原則義務化される。医療機関、患者双方向から同時に強制しなければ進まないと考えたのだろう。国はデジタル化推進の理由にさまざまなメリットを挙げる。たしかにこれからの社会に必要なインフラであり、さまざまな便利さをもたらすであろうことは否定しない。しかし、マイナポイント事業などを駆使してもカードが普及しないのは、国が集めた個人情報がどう使われるのか、情報が漏洩しないのか、利便性以上に国民の不安が根強いからではないのか。
マイナンバー制度が導入されたのは2016年だが、カード普及率は49・6%。2021年10月に利用開始したマイナ保険証を持つ人は全人口の2割にすぎない。全国の医療機関におけるオンライン資格確認参加率は10月現在31・5%で、医科診療所では21・4%に限られる。
このような状況であるにもかかわらず、国は国民の不安に向き合わず、丁寧な説明を尽くすこともせずに、「強制」というカードを切ってきた。この間の政治の劣化が顕著にあらわれている。
また、「マイナ保険証」を取得したくてもできない人が出てこないのか。具体的な仕組み作りはこれからだという。これにより、患者の受診機会を阻害することや、その混乱を医療の現場に押し付けることがあってはならない。
改めて協会は、国に対しデジタル化にあたっては国民の情報管理の在り方と使い方について根本的な見直しを行って国民の理解を得ること、そしてマイナ保険証およびオンライン資格確認の義務化を撤回することを求めるものである。
2022年10月18日
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