EVシフトは地球環境に優しくない?!
近年、地球環境保全の一手段としてEV(電気自動車)シフトが政策として奨励され、各国の政治経済的な都合もあるのでしょうが、欧米などでは近い将来のHV(ハイブリッド自動車)を含む内燃機関車の製造・販売までをも禁止する政策を取り始めた国が複数出てきています。
でも、EVは本当に地球環境に優しいのでしょうか?
確かにEVやFCV(燃料電池自動車)は、原子力発電と同様に運用時の温室効果ガス発生は無視できるほどに微少でしょう。しかし、中枢部品であるリチウムイオン蓄電池(以下、LIB)や燃料電池の製造には、極めて大量のエネルギー(電力)を必要とし、その他車体・タイヤ・電装品の製造や原材料輸送などにも多くのエネルギーが必要です。この大量のエネルギーの多くは、現状では温室効果ガスを大量に発生する火力発電に頼らざるを得ません。現在、世界総発電量の7割程度、日本では8割強が火力発電によるものとされています。
一説ではEV製造に費やしたCO2排出を相殺(カーボンニュートラル)するためには、10万㎞程度の走行が必要と言われています。現在は補助金を考慮してもEVは相当高価であり、EV所持をステータスと考える高所得者が主購入層のようですが、乗り換えサイクルの短いであろう彼らが、LIBの劣化も考えられる10万㎞も乗り続けるとはとても思えません。また価格やLIBの経年劣化以外にも、充電インフラの未発達・長い充電時間・短い航続距離・電欠の恐怖・発火の可能性など、問題は山積しています。
世界に先んじ国策としてEV化を推進した某国などでは、前述の問題に加えEV・LIBの廃棄問題が表面化しており、各所にEVの墓場が出現しているようです。LIBリサイクル・リユース産業も勃興しつつあるようですが、明らかに未熟で、重大な環境汚染の一因となっています。近く欧米も同様の道を辿るでしょう。
我が国の一般家庭電力消費量は1日当たり10~15
kWhとされますが、EVのフル充電にはこの数倍の電力が必要です。日本の登録自動車数は一般乗用車のみでも4300万台にも達します。ゼロエミッションではないHVは普通乗用車新車登録の過半数に迫っていますが、EVはまだ1%弱です。EVの総電力消費量は実働率・使用率などの変数が多く計算は難解ですが、一説によると普通車の1割(約400万台)がEV化すれば、およそ原発1基分・火力発電所数基分の電力の上積みが必要となるとも言われています。さらに半数がEV化されれば、夏の電力消費ピーク時に供給不足になるのは明らかでしょう。残念ですが自然エネルギーでの代替は、エネルギー密度や発電量・コスト面などで困難でしょう。まあ近年の太陽光や風力発電施設による自然環境の破壊も目に余りますが…。
これは体の良い原発稼働期間延長、果ては新設の言い訳にされてしまいそうです。
今後の技術的ブレークスルーによる蓄電池性能の向上・スケールメリットによる価格低下・充電インフラ充実などにより状況は改善していくでしょうが、前途多難は明らかです。
私には拙速なEVシフトは明らかに地球環境に悪いと思わざるを得ないのです。
(環境対策委員長・武田信英)