確認不足によるドレーン留置の見落とし
(20歳代後半女性)
〈事故の概要と経過〉
患者は本件医療機関に初診で受診。担当したA外科医師は肛門周囲膿瘍と診断し、局所麻酔下で切開排膿を行いタンポンを挿入した。翌日になっても排膿が不十分であったためB外科医師がペンローズドレーンを挿入した。その際に患者は妊娠中(臨月)であったため、局所麻酔の使用を控えてペンローズドレーン針付縫合糸で縫合固定はしなかった。翌々日は休日で担当のC整形外科医師が診たところ、ペンローズドレーンが見当たらなかったので抜去されたと判断して再挿入した。患者は初診から約3週間後に出産した(初産)。その後、患者は出産から3カ月経過しても患部の痛みが継続するため、D医療機関を受診。患部の切開排膿を受けたところ、本件医療機関で挿入したペンローズドレーンが残存していたことが発覚した。
患者側は、出産後に鎮痛剤を処方され、それを服用したため、初産児に授乳できなかったことなどについて賠償請求をしてきた。
医療機関側としては、院内事故調査の結果、患者から「抜けた感覚がない」と申し出があったにもかかわらず、C整形外科医師がペンローズドレーンを抜去されたものと判断して再挿入したこと、さらに妊婦ということでペンローズドレーンを針付縫合糸で縫合固定しなかったことに対して過誤があったと判断した。
紛争発生から解決まで約2カ月間要した。
〈問題点〉
医療機関側の主張を認め、過誤は全面的に認められると判断された。
〈結果〉
医療機関側は過誤を認めて、賠償金を提示した。患者側はその額に不満を示したが、若干賠償額を増額したことにより、示談できた。ただし、それは当初患者側が要求していた額の半額以下であった。
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