前回、本紙2021年1月25日3090号で、D・W―ウェルズの『地球に住めなくなる日「気候崩壊」の避けられない真実』を紹介し、副題として「地球に負担を掛けない生活改善を学ぼう」と提案した。「もう避けられないのなら、今さら生活改善でもあるまい。矛盾している」との読後のご意見を頂戴した。「それもそうだなあ」と半ば諦めぎみに今の生活を続けていた。その一方で、何か具体的な生活改善項目を知りたいものだと、近隣書店で、その「解決する方法」と書題にあるこの書籍を見つけて藁をもつかむ思いで購読した。冒頭、スウェーデンの若き環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏が序文を書いている。大気中の二酸化炭素の安全な限界値は約350ppmと考えられているが、すでに1987年にそれに達し、2020年には415ppmを越え、人間を原因とする二酸化炭素排出量の半分は、1990年からの30年間に排出されたものとして、この最近の指数関数的増加の影響が著しく、世界人口の10%が他の90%より多く二酸化炭素を排出する気候不正義を指摘する。まず、科学者達の執筆したこの本書を必ず読み知ることを重要とする。
そこで、本書から日常生活の中で、個々人が具体的で簡単にでき、しかもその効果が目に見えて判るようなことで、何か皆と大多数で継続的に行えば、地球環境を守ることが得られる、その項目を挙げることができればと考えた。
前稿での小宮山宏氏は『地球持続の技術』(岩波新書)に3項目を挙げ「ビジョン2050」促進へと提起する。
熱中症も恐いが、温暖化対策に環境省は「クールビズ」を呼びかけ、室温28℃を推奨した。一方で入室すると寒くなるビルもまだあり、問題である。
個人的実践としては、(a)夜の勉強時なども、離机時は、小まめにスイッチを切り消灯する、(b)プラスチックや非燃性ゴミと可燃性ゴミの分別廃棄を厳密にする、(c)牛乳・ジュース等1L用の紙パックを切り開いて再生紙用に回し、また、(d)少人数用に自動車の運転はやめ、電動自転車に変更した。この中で効果的なのは、(a)~(c)よりやはり、(d)であろうか。
本書では、さらにきめ細かく、プラネタリー・スチュワードシップ(責任ある地球管理)に向け、この2020年代を社会・政治・経済・テクノロジーの4つの重要分野で世界が有益な転換点とすべく、例えばエクステンション・レベリオン(XR)の要求のように、イギリス政府が「気候非常事態」を宣言する他、2025年に二酸化炭素の排出量を実質0にする旨法律に明記すると約束させることを求めたり、その他アースショット(地球の視点で考える)構想が多く提唱されており、徐々に実行されつつあるとする。これまで、第1幕~第3幕の地球環境衰退の現実描写を読み絶望的な暗い気分になっていたが少しは未来への希望に目が向かう。ただし、その内容は個人にはやや抽象的で、項目の抽出には勉強会も要するであろうし、法律を制定して実現するには、市民・国民がそう求め、それに関してその方向への社会的運動への参画・実行も要するとする。
『1984年』のパロディでもあるまいが、小説『2084年報告書―地球温暖化の口述記録』では、気温上昇により、干ばつやら森林火災が頻発し、雨量の増減も極端で、ついには水不足・灌漑不足で農耕もできず、氷河も消えて海面上昇し低地が水没するなど地球上では崩壊が進行している。米・中・印・日の4大消費国の二酸化炭素の垂れ流しによる温暖化と恨まれている。
本書では、それらの回避に最後のこの10数年間を有効期間として有益に使用できるようその重要性が強調される。ご購入・ご一読をお勧めする。
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