患者の「意見」を信頼につなげる 医院オリジナルの接遇研修  PDF

 協会は6月16日、医療法人そがべ医院(西京区)に㈱JAPAN・SIQ協会の接遇講師の谷洋子氏を派遣し、3回目の接遇研修を開催した。曽我部院長を含め12人が参加。今回は「ご意見対応編」として、患者からの苦情をいかにクレーム(意見)にならないようにするかを実践形式で学んだ。

初期対応のポイントを学習

 患者からの苦情は、“待たされる”“話を聴いてくれない”“返事がない”などコミュニケーション不足から生じることが多い。苦情の原因は必ず医院側にあるため、対応した者が直接悪くなくても、不快な思いをさせたことにまず謝罪をすることが基本。とっさにその謝罪の言葉が言えると、苦情がエスカレートしないための初期対応になる。患者には、今後同じことを繰り返さないよう十分に注意していくことを伝えることも忘れない。
 謝罪していることが患者の望みとズレないように、しっかり患者の話を聴く。そのために相手の言ったことを復唱することも重要。
 言葉以外の対応方法は、時を変える、場所を変える、人を変えること。患者が感情的になっている場合は、場所を移って、座ってもらってお茶を飲んでもらい、上司を同席させて話を聴く姿勢を見せると、患者の気持ちも少しは和らぐことが期待できる。
 意見対応は医院の危機管理の一つで、今後同じことが起こらないよう予防するためにある。しっかり対応することで、医院の信頼を高めるチャンスにもなる。

医院での接遇研修開催の思い

 今回、曽我部院長に接遇研修にかける思いを語っていただいた。
 1回目の研修から1年が経ち、従業員の意識や医院に変化はありましたか?
 ―私も含めてみんな接遇について学んだことがなかった。今まで疑問に感じなかったことに、できていなかったと気づけた意義は大きい。接遇の基本を知っているか知らないかは、日々の患者対応で大きな差が出る。最近では、医院に寄せられる患者さんからのクレームが減ったという印象を持っている。
 研修を受けて新たに取り組まれたことはありますか?
 ―毎日朝礼をするようになった。従業員が決めた毎月のスローガンの復唱とあいさつを練習している。最初はスローガンを考えられないと言う従業員もいたが、一人ひとりが考えることが大事だと伝え、今は順番に担当してもらっている。
 この間のコロナの影響についてはいかがですか?
 ―ワクチン接種が進み、従業員が安心して働けるようになった。当初は、過度に不安になっていたが、どうしたら感染しないか丁寧に説明して、外来の仕組みも変えていった。発熱患者は院内に入らないよう徹底するなど、患者さんにも随分と協力してもらっている。
 コロナ禍で初めて来院される患者さんも増えたが、状況がどんどん変化する中で対応できたのは、接遇研修を通して、患者さんの視点で物事を考えることができたからだ。患者さんの不安に寄り添う気持ち、患者さんへの声掛け一つなど少しの心配りで、患者さんの満足度も上がると実感している。
 今後、実践していきたいことはありますか?
 ―従業員全員の意識を変えることは本当に難しい。特にベテランの従業員はプライドやこだわりを持って働いている。彼女たちに納得してもらって、全員の思いを一つに医院の接遇力をもっと上げていきいたい。従業員全員で同じことを学び、共通認識を持つことに意味があると考えており、4回目の研修も計画している。
 接遇研修は従業員が受けるものと思いがちであるが、院長にこそ受けてほしい。きっと新たな気づきを得て、患者さんの満足度を上げるきっかけになる。接遇は医院経営になくてはならないと思う。

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