7月、赤字ローカル鉄道のあり方を議論する国土交通省の有識者会議が開かれ、1日1㎞あたりの利用者数が1000人未満の路線について存廃を協議する提言をまとめた。7月公表の「国土形成計画」中間とりまとめで、日常生活が成り立つ人口基準を10万人前後とした。従来は生活に必要な機能を備えるために約30万人程度必要としていた。遠隔診療や自動運転配送で対応できるという▼明治以後、鉄道は日本中に敷かれ、ヒトやモノが繋がり国として一体化し発展してきた。しかし国鉄民営化後、元来人口の少ない地域の路線は赤字とみなされ廃線に。廃線になるとさらに人口が流出し、バス路線もなくなる▼過疎地でも通学時間の運行は維持され、そこを故郷として子どもは育った。しかし廃線で寮や下宿生活になると、故郷での思春期はなくなり、病気や介護で実家に親がいなくなると、生家しか残らず故郷は消滅する▼30万人は県庁所在地規模である。ここを中心に10万人程度の地方都市と周辺町村で県独自の文化生活圏を形成していた。国は人口10万あればデジタル技術で日常生活は成り立つという。物流は自動運転で可能だろうが人流は途絶える。人流が途絶えると文化は消滅する。今地方社会を維持しなければ、異常気象で崩壊する山河の管理や、沿岸部からの侵入者の監視ができなくなる。(恭仁)
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