医療のICT活用は否定しないが営利と安上り医療目論む政策には反対 2021年度地区懇アンケート  PDF

 22年度改定で顔認証機能付マイナンバーカードリーダーを用いたオンライン資格確認について、「電子的保健医療情報活用加算」が新設された。また、コロナ禍を理由に臨時的に導入されていたオンライン診療による初診が認められ、点数化された(ただし、電話によるものはいまだ臨時的取扱い)。さらに、21年9月から支払基金において「審査支払新システム(AI審査)」が導入され、「システム刷新後2年以内にはレセプト全体の9割程度をコンピュータチェックで完結することを目指す」とした。
 これらの動きに先立ち、21年10月から22年3月にかけて開催した地区医師会との懇談会で「オンライン資格確認、オンライン診療、コンピュータ審査」についてアンケートを実施した。
 対象2225人のうち、367人から回答(回答率16%)があった。

カードリーダー「設置する気なし」45%

 まず、オンライン資格確認について尋ねた。
 顔認証機能付マイナンバーカードリーダーについて、「設置している」11%、「設置予定」17%、「設置考慮中」26%、「設置する気なし」45%であった(図1)。
 「設置している」方に利用者数を尋ねたところ、月平均1・0人であった。
 受付窓口、機器操作、カード持参等で困った出来事、事例がないか尋ねた。22人が回答。「有用だ」との意見が1人、その他「利用者がいない・少ない」「機器を置くスペースがない・邪魔」などの意見や、「保険証なしで、マイナカードのみで保険診療を求められた」「紛失の恐れがあり、ほとんどの人が希望していない」との意見が出された。

オンライン面談は自費
「認められない」41%

 次に、オンライン診療について尋ねた。
 コロナ感染防止以外の理由で「初診からのオンライン診療」を求められたことがあるか尋ねたところ、「ない」87%、「ある」4%であった(図2)。
 「ある」場合の事例を尋ねたところ、「他院診療中の薬の処方」「整形外科でレントゲンなどの検査が必要なため、断った」との報告があった。
 21年6月18日の規制改革実施計画の中で「医師が、初回のオンライン診療に先立って、別に設定した患者本人とのオンライン面談(自費面談)を行い、医師・患者双方が合意した場合には、初診からのオンライン診療を認める方向」と検討された。この初診に先立つ「オンライン面談」は保険診療とみなさないとされている。この取扱いをどう考えるか尋ねたところ、152人から回答があった。
 大別して「認められない・おかしい・保険診療とすべき・自費ではない」等が41%、「それでよい・仕方ない・自費で良い・当然・賛同・妥当」等の意見が17%、「分からない・知らなかった・何も思わない」等の意見が18%、その他の意見が23%であった。その他の意見の中には「面談でオンライン診療不可となった場合、自費請求は難しく、医師の時間と手間の持ち出しとなる」「本診察との区分が不明確」等の意見が出された。
 会員や患者からのオンライン診療に関する意見や感想を聞いたところ、112人から回答があった。大別して「やる気はない・できない・要望がない・当科では無理」「リスク、問題、疑問がある」がそれぞれ21%、「オンライン診療、オンライン面談に反対・不要、対面診療が原則」15%、「僻地・離島の診療、再診時など、限定的なら認められる」8%、「やりたい、ニーズがある、増えてくる」7%、「システム利用料が高い、業者を儲けさせるだけ」5%、「点数を上げるべき、適切な点数とすべき」「負担が大きい・重い、手間が大変」がそれぞれ4%となった。
 意見を少し紹介すると「消化器科・小児科・精神科・外科・耳鼻咽喉科では不向き・不可能」「ウェラブル身体計測機器や、自己検査記録とのデータリンクがなければ無責任」「診療科、地域性、患者のADLその他さまざまな要因により必要性、重要性が異なるため慎重な議論が必要」「高齢者が多い診療所では困難」「今までの診療のあり方が、本来の人間的な医療のあり方である」「某社のサービス利用規約を読んでみたが、コンビニの本社と加盟店のフランチャイズ契約のようであり、危なくてサインできないと思った」などがあった。

効果・効能と一致せずで「減点された」20%

 最後に、AI審査について尋ねた。
 コンピュータチェックによるものと考えられるような、今まで経験したことがない減点事例があるか尋ねたところ、例示としてあげた「医学的またはICD10から見て対象疾患に含まれる傷病名を記載したのに、薬剤の『効果・効能』と一致していないとして減点された」を選択した方が20%となった。また、「診療行為に対する加算点数の入力日が違っていただけで減点された」が5%、「特定保険医療材料や加算点数の請求コードが間違っていただけで、同一の材料、同一の主旨の加算が減点、返戻された」が4%となった。

医療のICT活用
見極めが必要

 政府は6月7日「骨太方針2022」を閣議決定。経済成長のエンジンとして、デジタルトランスフォーメーション(DX)に重点的に投資を行うとした。オンライン資格確認の義務化、オンライン診療の活用、電子カルテ情報の標準化、AIホスピタル等を打ち出している(本紙第3124号既報)。
 協会は医療におけるICTの活用を否定しない。むしろ、DtoDや多職種カンファレンス、遠隔病理診断、手術支援ロボット等の分野では、活用を進めるべきだろう。
 だが、営利企業の影が背後にチラつくマイナンバーカードによるオンライン資格確認義務化には反対の立場であり、安上がりの医療を目論むオンライン診療の性急な拡大には慎重な立場を貫きたい。調査結果は今後の協会活動に活かしたい。

図1 顔認証機能付マイナンバーカードリーダーについて
図2 コロナ感染防止以外の理由で「初診からのオンライン診療」を求められたこと

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