医界寸評  PDF

 「ひまわり」というウクライナを舞台にした映画が全国でリバイバル上映されている。第二次世界大戦で無理やり引き離された夫婦の悲恋の物語。ソ連戦線に送られた夫の帰りを待ちわびるイタリアの若妻を演じるのは、往年の名女優ソフィア・ローレン。結局、夫は帰ってはこなかった。エンディングの地平線にまで広がるウクライナのひまわり畑は悲しくも美しい▼近年、想定外という言葉をよく耳にする。100年に一度の大雨、100年に一度のパンデミック、1000年に一度の大地震、ほぼ確率ゼロと信じられていた原子力発電所のメルトダウン等々。21世紀のヨーロッパで戦車と装甲車が入り乱れ市街地で撃ち合うなど誰が想定できただろう▼戦争の記憶は薄れゆき、我々は平和を享受している。しかし、平和はあって当たり前ではないようである。平和は努力の末、やっと獲得できるもの。人は生きているだけでとんでもなく有り難いのかもしれない▼「ひまわり」では二人の愛は戦争で奪われ、元に戻ることはなかった。しかし、傷心したままこの物語を終わらせたくはない。主演女優はエンディングで何も語ってはいない。しかし確かに心の中で叫んでいたと思う。「たとえ私たちの愛が引き裂かれようと、これからどんな運命が待ち受けていようと、私は必ず幸せになって・み・せ・る」(clear)

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