短期滞在手術等基本料の施設基準が緩和
外 科副理事長 林 一資
「外保連試案2022」等における手術に係る人件費や材料費の調査結果等を参考に、手術料が改定された。汎用点数ではK000創傷処理の筋肉、臓器に達しないものの「長径5㎝未満」がプラス60点、「長径5㎝以上10㎝未満」がプラス100点、筋肉、臓器に達するものの「長径5㎝未満」がプラス150点、「長径5㎝以上10㎝未満」がプラス200点、K000-2小児創傷処理(6歳未満)の筋肉、臓器に達しないものの「長径2.5㎝未満」がプラス50点、K001皮膚切開術の「長径10㎝未満」がプラス70点、などで引き上げられた。
他科でも話題になっていると思われるが、A400短期滞在手術等基本料の1(日帰り手術の場合)の施設基準が緩和されたことの影響が大きい。「1」はもともと入院ベッドは必要ない。術後の患者の回復室を確保し、患者が回復室にいる間は患者4人に対して看護師1人が回復室に勤務している、退院後おおむね3日間の患者に対して24時間緊急対応可能な状態にある―などの施設基準に変更はないが、従前は全身麻酔以外の麻酔で行える手術であっても麻酔科医の勤務が必要であった。今回の緩和により、麻酔科医の勤務は全身麻酔を伴う手術を行う日のみでよくなり、無床診療所でも届出、算定を検討できるようになった。
対象手術も23項目追加された。一般外科で言うと、6歳未満の患者に対するK005皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)の長径4㎝以上、(露出部以外)の長径6㎝以上12㎝未満、長径12㎝以上、消化器領域ではK653内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術の「1」早期悪性腫瘍粘膜切除術、K721内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術の「1」長径2㎝未満などが元々対象だったが、今回の改定でK030四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術の「2」手、K070ガングリオン摘出術の「1」手、K743痔核手術(脱肛を含む)の「2」硬化療法(四段階注射法によるもの)、K747肛門良性腫瘍、肛門ポリープ、肛門尖圭コンジローム切除術のうち肛門ポリープ、肛門尖圭コンジローム切除術などが追加された。施設基準はしっかり理解してもらいたいが、手術の加算のように考えてもよいかもしれない。
今回の改定でA400短期滞在手術等基本料の1(日帰り手術の場合)は麻酔を伴う手術の場合2947点(据え置き)と、それ以外2718点(新設)に区分された。この場合の麻酔とは何が該当するか、4月20日現在、告示・通知・事務連絡されておらず、明確ではないが、全国保険医団体連合会からの照会に対して、厚労省保険局医療課は口頭で「麻酔管理料の対象麻酔:硬膜外麻酔、脊椎麻酔、閉鎖循環式全身麻酔を予定。追って事務連絡で示す」との回答。
今後の疑義解釈に注意いただきたい。
インパクトない細かな改定
整形外科理事 宇田 憲司
前々回改定で新設された小児運動器疾患指導管理料(B001-28)250点については、適用年齢が前回の12歳未満から20歳未満に拡大された。
二次性骨折予防継続管理料(B001の34)が新設された。骨粗鬆症を有する大腿骨近位部骨折患者に対して、関係学会のガイドラインに沿って継続的に骨粗鬆症の評価を行い、必要な治療を実施した場合に算定し、イ.1000点:手術を実施した入院患者、ロ.750点:他院においてイ.を算定した入院患者、ハ.500点:他院においてイ.を算定した外来患者とされた。
整形外科的な検査としては、関節液検査(D004の2)50点が新設された。ただし、排泄物、滲出物または分泌物の細菌顕微鏡検査(D017)との同時算定は不可とされる。
骨塩定量検査のREMS法(腰椎)(D217の2)で140点が準用点数から正式に点数化され、腰椎および大腿骨の骨塩定量検査を同一日に実施した場合は、大腿骨同時検査加算55点(増点)が付く。
疾患別リハビリテーションに、リハビリテーションデータ提出加算50点が新設された。試行データ提出の実績を認められた医療機関が、リハビリに関するデータを厚労省に継続的に提出する場合に月1回・外来のみ加算されるが、実際に算定できるのは、23年10月1日以降のことである。届出を要する。
下肢創傷処置(J000-2)1.足部(踵を除く)の浅い潰瘍135点、2.足趾の深い潰瘍または踵の浅い潰瘍147点、足部(踵を除く)の深い潰瘍または踵の深い潰瘍270点が新設された。1創傷処置、爪甲除去(麻酔を要しないもの)および穿刺排膿後薬液注入は併算不可で、2複数の下肢創傷がある場合は主たるもののみ算定となる。
前述の処置(J000-2)と併せて、下肢創傷処置管理料(B001の36)500点が新設されたが、下肢の潰瘍を有する患者に対して、研修を修了した医師が学会のガイドライン等を参考に、計画的な医学管理を行い療養上必要な指導を行った場合に月1回算定でき、届出を要する。糖尿病合併症管理料との併算定は不可である。
治療用装具採寸法(J129-3)200点は、既製品を処方した場合は原則算定できないとされた。
手術では、大腿骨近位部の骨折に対して骨折観血的手術(K046)がなされ、骨折後48時間以内に整復固定が行われた場合は、緊急整復固定加算として4000点が新設された(要届出)。脊椎固定術、椎弓除去術、椎弓形成術(多椎間または多椎弓の場合を含む)(K142)で、1.前方椎体固定、4.前方後方同時固定で増点された。
同一手術野の手術(通則14)において、二つ以上の手術を同時に行った場合、主たる手術の所定点数のみにより算定する。今次改定の内容ではないが、神経移植術、骨移植術、植皮術、動脈(皮)弁術、筋(皮)弁術、遊離皮弁術(顕微鏡下血管柄付きのもの)、複合組織移植術、自家遊離複合組織移植術(顕微鏡下血管柄付きのもの)、粘膜移植術もしくは筋膜移植術、と他の手術とを同時に行った場合、大腿骨頭回転骨切り術もしくは大腿骨近位部(転子間を含む)骨切り術と骨盤骨切り術、臼蓋形成手術もしくは寛骨臼移植術とを同時に行った場合等では、それぞれの所定点数を合算する。従たる手術で2分の1の点数を加算できる場合と誤解せぬようにする必要がある。
短期滞在手術等基本料1(日帰りの場合)(A400、要届出)で麻酔を伴う手術を行った場合の「イ」では2947点、イ以外「ロ」では2718点が手術の点数に加えて算定できる。同3(4泊5日までの場合)は病院のみが対象だが整形外科領域の手術が対象に追加された。例えば、チの四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術(K030の2:手・足)、リの骨折観血的手術で舟状骨(K046の2)、ヌの骨内異物(挿入物含む)摘出術で前腕(K048の3)、ルの同鎖骨(K048の4)、ヲの同手(K048の4)、ワの手のガングリオン摘出術(K070の1)、カの関節鏡下手根管開放術(K093-2)等である。
今回の改定では、インパクトのある改定項目は見当たらず、もはや「メンテナンス不足改定」ともさえ言えよう。しかし、今回の改定に沿って診療業務に勤しみ、2年後にはさらに、医療崩壊を誘導するようなドラスティックな改定でなく適正な改定を獲得できるよう、今後とも大きく目を見開いて、より適正な診療報酬改定への要求運動を展開する必要があろう。