反核京都医師の会は4月2日、第42回定期総会を開き、「核兵器禁止条約が発効、核廃絶のために誰にでもできること」をテーマに市民公開講演会を開催した。講師は近畿反核医師懇談会で取り組んでいる「核兵器にお金を貸すな(Don’t Bank on the Bomb)」プロジェクトの事務局長・松井和夫氏。オンライン併用で20人が参加した。
松井氏は、核兵器禁止条約が発効したが核兵器国が不参加の中、「核のない世界」実現に向け、条約に実効性を持たせる極めて有効な方法がDBOBであると強調。2020年に世界の核兵器に使われた金額は、核保有国政府で8・3兆円に上ると推計される。このうち、約3・2兆円を核企業が受注している。そして、金融機関から核企業への投融資(19年1月~21年7月)は約80兆円で、日本は計7機関から4・4兆円(全体の5・6%)となっている。
DBOBキャンペーンが意味を持つ背景には、核兵器が国際法で禁止され、禁止事項には援助や資金提供も含まれる。銀行はグローバル企業であり、こうした世界の動きを注視するとともに、ESG(環境・社会・ガバナンスの視点を取り入れて判断する投資)やSDGs(持続可能な開発目標)などの社会的背景の変化に対応しないといけない。さらに、市民社会の台頭がある。何より金融機関は評判の低下を恐れており、融資が受けられなくなることで、クラスター弾を生産中止に追い込んだ実績がある。
近畿反核医師懇談会で行った金融機関アンケート結果で、メガバンクは核兵器への融資はしないと回答しているが、核兵器製造部門への直接の投融資は禁止していても企業そのものへの投融資は可能となっている。民生部門に限定した融資でも核兵器のために使われない保証はなく、必要資金に余裕ができるので核兵器部門に余裕資金を回すことができる。核兵器を生産する企業は利益を得るために永久に持ち続けようとする。企業そのものが悪であり、核兵器と直接関係ない部門だからと投融資することは許されない。
具体的に私たちができることは、銀行へ行ってDBOBキャンペーンを広めること。自分のお金の使われ方を尋ねるだけであり、一般市民が気軽に取り組め、核兵器廃絶運動に取り組んでいることを実感できると説いた。
我々の老後資金を兵器に使うな
GPIFと厚労相に投資撤収を要請
国民の年金資産を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国際法で禁じられている兵器「クラスター弾」の製造企業の株式を保有していることが報じられた(東京新聞3月30日)。これを受けて協会は「GPIFに国際法が禁じる兵器の製造企業に投資しないことを求める」要請を同法人とそれを管轄する厚生労働大臣宛に4月14日に送付した。
報道によると、国会で運用見直しを問われた後藤茂之厚生労働大臣は「個別の銘柄を投資対象から除外する指示を政府が行うことは難しい」と説明したとされる。ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻でクラスター弾が使用されているとされ国際的に非難が高まるなか、大臣の説明は恐ろしく他人事のように聞こえる。
クラスター弾は、その非人道性から2010年に禁止条約が発効、日本も署名している。21年に禁止条約が発効した核兵器についても、投資額は約4000億円(20年3月末時点、近畿反核医師懇談会)にのぼる。日本政府は後者に未加盟ではあるが、国際規範としてのこれら条約を軽視することは人道的な立場から許されるものではない。
まして国民に支払わせる保険料が、「老後の備え」ではなく、殺人に利用されている事実は、生存権保障の理念の下に展開されるべき社会保障と全く相容れない。スウェーデンなどは、武器製造に関わる特定の企業の株式を公的年金の投資対象から外す措置を講じており、日本政府の姿勢が問われている。
人々の生命と健康を守り、あらゆる戦争に反対する医師団体として、国際法に違反するクラスター弾や核兵器などの兵器製造を行う企業への投資を撤収することと、外部委託する場合は当該企業を除外することを明確に指示することを要請した。