2022診療報酬 改定こうみる 2  PDF

医療提供体制改革加速のみに力点

入 院・有床診理事 吉中 丈志

 新型コロナ感染症第6波では、高齢患者が入院できずに介護施設などに留め置かれて死亡する事例が目立った。にもかかわらず、今次改定は急性期病床削減など従前の医療提供体制改革を加速することに力点が置かれ、高齢者が入院して重症化を回避し最善の治療を受ける条件を狭めるものとなっている。
 これを象徴するのが急性期入院医療の「重症度、医療・看護必要度」の見直しである。A項目の「心電図モニター管理」が削除された影響は大きい。中医協では急性期一般1基準(7:1)を満たす病院が14・2%減少し、特に200床未満では27・8%減少すると試算し、狙い撃ちした形だ。中小規模病院を中心に急性期医療を担う病床維持ができなくなることが予想される。
 新型コロナ感染症患者の診療では、感染防護の観点から看護師などのマンパワーがより多く必要である。第6波で新型コロナ感染症患者の治療を行った病床の看護基準が下がれば適切な医療提供ができなくなる。病床ひっ迫による年齢差別を助長し、現場で治療に当たる医療従事者に苦渋の選択を強いるものと言わざるを得ない。今次改定の大きな問題点である。
 一方で、高度かつ専門的な急性期医療の提供体制の評価と銘打って急性期充実体制加算が新設された。第三次救急医療施設であることや、年間の全麻の手術2000件以上などの高いハードルがあり該当医療機関は全国でも少ない。高点数に設定し病院の大規模集中による再編を象徴している。
 地域医療構想では機能分化と銘打って、病院の大規模集積集中、中小病院切り捨ての方向が目立っている。外来機能報告制度にもリンクさせ、外来を紹介受診重点医療機関とかかりつけ医に二極化させる方向を打ち出し、その一方で一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関には同入院料加算が新設されている。
 加えて紹介受診重点医療機関には定額負担額が導入された。初診では7000円、再診では3000円に引き上げ、その分を病院の初診料から控除する仕組みだ。7割の保険給付を定めた健康保険法に違反するとともに、病院には地域連携努力不足に対するペナルティーを設定した形だ。今後、かかりつけ医の制度化などの拡大が懸念される。
 新型コロナ感染時の医療提供体制として協会が注目した感染防止対策加算にかえて感染対策向上加算が新設拡充され、診療所も対象に加えられた。新型コロナ感染第6波では介護施設での感染が広がり、施設での療養を余儀なくされた例が多発した。すべての医療機関に加えて介護施設を包括する加算として充実させる必要がある。

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