憲法を考えるために 68  PDF

「核」の威嚇も
「核」での対抗も許さない

 「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」(憲法前文)。
 「二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません」(昭和22年・文部省「あたらしい憲法のはなし」)。
 長い時間が経過し、日本は他国と直接戦火を交えることなく、他国に武力侵略されることなく、今日に至っているが、世界ではベトナム戦争をはじめ、さまざまな争いが絶えず起こっている。
 そして今回、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。核を保有し、国連で拒否権を持つ常任理事国が隣国に武力侵攻するなど、私には想像しにくいことが、現実に起こってしまったのだ。そして、核の使用すら危ぶまれる事態といわれている。このような事態に至った当事国、隣国、欧州をはじめとする国々にどのような問題があるのか、またその解決の方向、方策をどのように見つけ推し進めていくのか、そしてその間にも犠牲者、多くの市民の犠牲者は増え続け、もし核が使われてしまえばその惨禍は…。
 自民党の安倍晋三元首相は、この侵攻をきっかけに「核共有」政策を提唱。核による威嚇に対し核で対抗と明言したことになる。これが、戦争被爆国である日本、戦争放棄を明記した平和憲法を持つ日本の首相を務めた者の発言だと思うと情けない限りである。
(政策部会・飯田哲夫)

ページの先頭へ