社保研レポート コロナ流行のメカニズムを解説  PDF

講師:京都大学大学院 医学研究科 環境衛生学分野 
教授 西浦 博氏

 協会は、第670回社会保険研究会を11月20日に開催した。参加者は会場9人、ウェブ35人の計44人。京都大学大学院医学研究科環境衛生学分野教授の西浦博氏が「新型コロナウイルス感染症の流行メカニズム研究と今後の見通し」のテーマで講演した。
 西浦氏は「皆さんの診療に大きな影響を及ぼしている新型コロナウイルスの流行について、どこまでメカニズムとして紐解いて私たちが理解しているのかを、表に出ていない部分も含めてご紹介したい。また、ワクチン接種が進んでいる欧州でもロックダウンを検討しているところが出ているなど、第6波は来るだろうと見ている方も多いことだと思うが、私たちがどういう見通しで構えているのか、何が問題なのかということをある程度共有できればと思っている」とあいさつ。まず11月17日の厚労省のデータをもとに、統計学的に導ける予測を説明した。GoToトラベルの予算が1月後半からの再開に向けて組まれているが、流行状況の予測データからは1月後半には感染者数が一定数いることが間違いなさそうだとし、とても複雑な気持ちで今の政策の成り行きを見守っていると述べた。
 これまでに実施した流行予測は目的・用途・限界などが種類によって大きく異なるが、①シナリオ分析と被害想定②ナウキャスティング(今の状況を理解する)③病床占有の予測④流行メカニズムの補足の四つに分けられるとした。
 例えば①は「流行対策が全く施されないとどうなるか」「他の感染症と比較してどうか」などを示すことで、この感染症がどれだけ重大なものかを一定の想定下で表すものだとし、また「ハイリスクの伝播が何%削がれると減少に移行するか」など、情報として伝えるための政策オプションとしても用いられてきたと説明。③については武漢やイタリアの厳しい状況を目の当たりにしていたため相当力を入れてきたと述べた上で、最近では世界のデータから、人口密度・気温・移動率・コンプライアンス(マスクの着用頻度やソーシャルディスタンスの確保度)などで感染拡大・再生産数のメカニズムが相当説明可能になってきたとした。一方、日本における第5波の減少理由については、自然感染による免疫獲得率が不明であることや、リスク認識の度合いの変化が時系列的に分かっていないことなどを挙げ、明確に結論付けられないと述べた。講演終了後は活発な質疑応答が行われた。

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