理事提言 保険部会 坂本 誠 後発品偏重政策に物申す  PDF

 昨年春より、小林化工株式会社の不祥事を発端に、一部後発医薬品メーカーが業務停止処分を受けました。この影響は他のジェネリック医薬品メーカーの医薬品にも及ぶに至り、供給不足や流通に悪影響をきたしています。協会の行った代議員会アンケート「2021年困ったことトップ3」でも、「後発医薬品の供給・流通に対する問題」が50%で1位でした。
 さらに、当初の予想に反し、臨床現場の混乱は収まる気配もなく、追い打ちをかけるように、今後業務・生産設備移行に伴う214品目の小林化工の医薬品が自主回収になる見通しです。私たちも臨床現場で、後発品のメーカーの変更、先発品に戻すなど、場合によっては休薬に追いやられています。
 現在、日本には200社近いジェネリック医薬品会社がありますが、その多くが原料を海外(中国、インド、韓国など)からの輸入に依存している状況です。コロナ禍の中で不安定な流通体制の問題を抱えていること、小林化工で起こった不純物混入の問題など欧米に比べると品質管理が緩くないか、適切かどうかといった点ももちろん問題ですが、これらの背景には「80%はジェネリック医薬品にする」といった、国・厚労省の行き過ぎた後発品の使用促進政策があることも深く関係していると思えてなりません。
 しかし、国・厚労省はこのような現状と関係なく、22年度の診療報酬改定では、後発品使用割合のより高い医療機関に重点を置く評価や、後発医薬品の調剤割合の低い薬局に対しての減算の拡大なども予定されています。中医協では「フォーミュラリ」の作成も検討されており、経済的視点が重視されれば、効果が同等である後発品を選択すべきという流れが強まることになります。これに対して医療側は反対の立場で、各種学会のガイドラインを参考に、医療側が自由度を持って検討すべきと主張しています。
 協会が行った9月度代議員アンケートと11月の会員アンケートでは、ほとんどすべての医療機関が医薬品の供給不足の影響を受けていました。それを受けて、国・厚労省に提出した要望では、医薬品の安定供給の確保とともに、後発医薬品使用促進政策の見直しを求めています。国民が必要な時に必要な薬を安定して利用するために、何が大事なのか今一度考え直す時ではないでしょうか。

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