信頼関係築くためにスタッフとの対面重視を 雇用管理講習会  PDF

 協会は、スタッフとのコミュニケーションに関する相談が日々寄せられていることから、信頼関係構築のヒントになる雇用管理講習会「院内の良好なコミュニケーションを築くために」を10月14日に開催した。講師は大阪大学COデザインセンター・センター長の池田光穂氏、参加者は9人。当日は、スタッフの福利厚生の一助に役立てていただけるよう休業補償制度の一括告知制度(2022年改定)も案内した。

 はじめに池田氏は、大学生を例に、昔はコミュニケーションで問題が起こっても時間が解決していたが、最近はSNSに書き込んで、さらに敵意や憎悪が増幅して問題がこじれる傾向があるとして、コミュニケーションを取り巻く社会的変化を指摘した。
 雇用管理で問題が起こったとき、両者の言い分を平等に聞き、問題の要素を一つずつ確認していくことになる。その際に重要なことは、是か非かの判断ではなく、両者の歩み寄りである。仮に組織側に非があれば、反省して誠意を見せなければいけない。
 池田氏はスタッフを、①部下に対してハラスメントを行うタイプ②家族が介入してくるタイプ③自己中心的で組織や他者と譲歩しないタイプ④被害を大きく感じるタイプ⑤ノンコンプライアンスタイプ⑥情緒が不安定なタイプ⑦環境が問題をつくりだすタイプ―に分け、それぞれの特徴を解説した。次に要因として、(1)本人の心的不安定さ (2)職場環境の不安定さ (3)本人の心的不安定さと職場環境のマッチングの悪さ―を挙げた。対処方法として、速やかな指導、頻繁な面談、必要に応じた懲戒、部署異動などを説明し、問題解決までの方法を示した。
 雇用管理のヒントとして、NASAの国際宇宙ステーションのスペースデブリ(宇宙ゴミ)の衝突リスクの回避を紹介。宇宙ステーションは、衝突リスクのダメージを受けやすいところの壁は厚くするなど工夫して設計されている。医療機関においても、経営という一つの共同体(宇宙船)として、リスクのある部分とそうでない部分を見える化したリスクマネジメントが重要だと強調した。
 最後に、「良好なコミュニケーションに必要なことはマニュアルには載っていない。人と人との関係はもっと複雑である。医療機関が活き活きとストレスなく働け、笑いとユーモアがあり、信頼関係のある組織であるためには、SNSの利用は必要最小限にし、対面的な接触を大事にしていくことが肝要だ」と締めくくった。参加者からの質問には、自院のスタッフとしっかり向き合い、まずは「言葉で伝える」ことがコミュニケーションの第一歩だとアドバイスした。

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