オンライン診療での医療トラブル事例 医療安全講習会で注意喚起  PDF

 協会は日本医師会総合政策研究機構駐仏研究員の奥田七峰子氏を講師に迎え、医療安全講習会「オンライン診療に潜む医療トラブル~フランスの事例から学ぶ」を21年11月13日にウェブで開催した。20年4月10日付の厚労省事務連絡で、新型コロナ感染拡大防止のため「時限的・特例的」に初診からのオンライン診療が可能となったことを踏まえ、日本よりオンライン診療が進んでいるフランスでの事例や医療制度について講演した。本講習会は、全国の保険医協会・医会会員医療機関からも参加を募り、121人が参加した。
 奥田氏はまず、かかりつけ医制度などフランスの医療制度をはじめ、新型コロナの感染状況や医療体制について述べた後、オンライン診療について次のように解説した。フランスのオンライン診療は、14年に一部の疾患において保険適用が認められたが、新型コロナの大流行を受けて、20年よりオンライン診療の対象となる慢性疾患の範囲拡大や、過去12カ月以内の対面診療の義務が撤廃された。また、医師過疎地域やかかりつけ医のいない患者、あるいは紹介予約が取れなかった患者に対しては初診からオンライン診療が可能となった。これらの大幅な規制緩和に加え、感染リスクを回避できるオンライン診療への需要が高まり、利用する患者が急増した。
 そういった状況の中、奥田氏はオンライン診療中に起こった医療事故が訴訟に発展している2事例を紹介した。現在2事例とも刑事訴訟中で、争点はオンライン診療ではなく対面診療であれば防げた誤診なのか、対面診療であっても防ぐことができなかった誤診であったのかという点であると解説した。
 最後に、奥田氏は「オンライン診療は診療科によって向き・不向きがあり、訴訟リスクの点からも、診療経過や問診内容を必ずカルテに記録し保存しておくことが重要である」等、フランスの医療事故損害賠償専門保険会社の弁護士の見解を引用しながら、参加者に注意喚起した。
 質疑応答では、オンライン診療のリスクや診療報酬、コロナ禍におけるフランスの医療体制等、幅広い質問が寄せられた。
 本講習会の模様は、期間限定で協会ホームページに掲載している。医療安全研修にご活用いただきたい。
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 本講習会は、協会ホームページの臨床・保険診療TV、または掲載のQRコードから視聴できます。

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