協会は2月25日、要請書「高齢・高リスク者の入所先への放置を解消し必要な医療を保障すること」を京都府知事、京都市長宛に提出した。
新型コロナウイルス感染症について岸田首相は「感染拡大のスピードは明らかに減少」(2月9日)とコメントしたが、現場の実感からはほど遠い。確保病床使用率は7割以上で推移し、2月下旬には自宅・施設も合わせた全療養者数は連日約2万人を記録している。
病床逼迫による入院困難事例の増加が全国的に問題になっているが、この間、「特別養護老人ホーム等、高齢者の入所施設に入所中の方が陽性となった場合、入院が必要であってもまったく入院できなくなっている」という悲鳴が協会に届くようになっていた。「酸素マスクを装着してもSpO2が91%までしか上がらず食事が摂れない」「高齢者が入院できず、施設に留め置かれている」「保健所の対応が間に合わず往診の依頼に対応してもらえない」「救急車で搬送されても受け入れ先がなく、帰ってこられる」。こうした声を受け、緊急に府・市への要請に至ったものである。
要請書では次の五つを求めた。①高齢者施設において、在宅酸素濃縮器等、必要な医療資機材を用意し、重症化防止のため抗ウイルス薬や中和抗体薬が時機を失せず使用できる条件を整えること②施設の配置医師だけでなく、訪問診療実施医療機関の協力も得てこれらの措置がスムーズに取れるようにすること。高齢者施設において入所者が感染した場合に、外来や入院について相談ができる専用の窓口を入院医療コントロールセンターに設置すること③島津アリーナに設置した入院待機ステーションの稼働状況を公表し、フル稼働する、収容可能数を増やす、医療スタッフを確保する等、体制を強化すること④宿泊療養施設の医療機能を強化し、ハイリスク患者を受け入れ可能とすること⑤高齢者、ハイリスク者などの3回目ワクチン接種を加速すること。
COVID-19診療の手引き6・2版は高齢者であること自体を「独立した重症化リスク因子」であると指摘する。60歳以上で基礎疾患のある場合は死亡率が12・8%にも及ぶ。第6波では全死亡者のうち70歳以上の死亡者が90%を超えており、第5波のそれを20%以上上回っている。したがって、中等症以上の高齢者の場合には入院治療が必要なのは言うまでもない。しかし高齢者施設の現場では、あまりにも入院ができない現実に対し、生命を落とす高齢患者も発生しており、施設スタッフ自身が無力感や諦めに打ちひしがれる状況にすらあるという。
持て得る限りの医療資源とネットワークを駆使し、高齢者の生命を守る医療実践が求められる。とりわけ京都府は「臨時的医療施設」として入院待機ステーション110床を「確保病床」数に繰り入れて発表している。にもかかわらず稼働状況自体が十分に明らかにされていない。万一、全床が稼働していないとしたら、すでに入院率は8割を優に超える。一刻も早く病床の稼働状況を明らかにし、本気で高齢者の生命を救う手立てを打ってほしい。
京都府(3月1日時点)