医界寸評  PDF

 88歳になる母がいる。認知症が進んでいる。3回目の新型コロナウイルスワクチン接種も終わったが、やはり今一番気になるのが母の感染である。感染した際に重症化しないか、必要があればすぐに入院できるか。認知症であっても、感染した際の苦しさ、不安は同じ。どんな状況の人も変わらず医療を受けたいと思うはず▼災害時にはトリアージが必要となる。限られた医療材料、治療薬の中で、治療の優先順位を考えなければならない。災害の場合、一度に多くの重症者に対応しなければならない状況に置かれるからだ。一方、新型コロナの場合は、感染して療養中に症状が悪化、重症化していく。しかも重症化リスクはわかっている。早期に医療につなげ治療することで、死亡者をなくすことができるのではないか▼今、京都府内に約1万5千人の自宅療養者がいる。特別養護老人ホームなど医療体制が十分でない施設で療養している方もいる。60歳以上で基礎疾患のある場合は死亡率が12・8%にも及ぶ。第6波では全死亡者のうち70歳以上の死亡者が90%を超え、第5波より20%以上上回っている。病床逼迫の中、高齢者に十分な医療が提供されているだろうか▼私たちは今一度、できていないこと、何をすれば死亡者0にできるかを考え、命の選別をしない医療体制を確立しなければならない。(治)

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