2017年の9月に11歳の我が家の犬のジャックが突然、血小板減少症で他界すると、私の家族はいわゆる「ペットロス症候群」に陥り、しばらくは茫然とした毎日を送っていました。しかし、3カ月ほど経つと家族のそれぞれが犬の検索を行っている様子で、ポータルサイトを開いてみるとペットショップの広告でいっぱいになる有様になってしまいました。「やっぱり犬を飼おうか」ということになり、ジャックと同じウエスティを探すことになりました。
ウエスティは本来はウエストハイランドホワイトテリアという長い名前ですが、ウイスキーのブラック アンド ホワイトのラベルの白と黒の犬の白いほうで、おなじみの犬です。
ネットでブリーダーを検索すると埼玉県の深谷市にウエスティが生まれたとの情報を得ましたので、早速、正月休みに群馬県に近い埼玉県深谷市に犬を見に行きました。私は日本そばが好きで、深谷と言えば有名なネギの産地と知っていましたので、ネギ畑に囲まれた駅を想像していましたが、着いてみると明治の実業家の渋沢栄一の出身地で駅に接してレンガ建ての立派な記念館があり、ネギよりも渋沢栄一の町でした。深谷駅からさらにバスで国道沿いのペットショップに着きましたが、探してもネットで見た、生まれたばかりの耳の垂れた黒目の大きなウエスティらしい子犬は見当たりません。店員に尋ねて、この子ですと言われたのは耳の長いうさぎのような犬でした。ところが、随分写真と違うなと思いながら抱いてみた瞬間にはもう、家族の一員として迎え入れる気持ちになっていました。
うさぎのような犬が旅行に耐えられる程に育って、深谷から1泊旅行で京都に着いた時には名前がニコラと決まっていました。ニコラは若い頃私がフランス政府給費留学生としてパリに行った時に、逆に日本政府給費留学生としてパリから京都に留学に来ていたフランス人建築家のNicolas FIEVEに由来します。ニコラは、当時は輝くような頭脳明晰な美青年だったからです。
犬のニコラはやがて初めての散髪に行くことになりました。ウエスティ用の散髪方式があるらしいのですが、散髪から帰ったニコラを見てびっくりでした。妻は「ニコラがジャックになって帰ってきた」と大喜びでした。先代のジャックと同じ容姿に変貌していたのです。
私が寝に行くと、半分は犬であることを忘れたニコラが先に布団を占領してぐっすりと眠っています。ニコラと布団の取り合いをしながら眠りにつく時、いつも思うのは果たしていつまで飼い主としての責任を果たせるかということです。
MENU