「未成年の受診」
あやめ法律事務所
松尾 美幸 弁護士
Q、未成年者が受診してきました。初診ですが、付き添いが来る様子はありません。治療に関する保護者の同意が確認できない時の注意点や対応方法について教えて下さい。
A、(1)前置き
保護者とは、親権者・監護者・未成年者後見人、その他法律上未成年者の監護権を有する者を指します。親といえども親権者ではない場合があります。
また、保護者の同意が不要な場合であっても、未成年者から保護者や保護者と連絡が取れそうな者(学校・祖父母等)の連絡先を聞くなどして、できる限り速やかに保護者の同意を得られるようにして下さい。
(2)緊急を要する場合
緊急を要する場合は、緊急避難行為(民法720条2項)または準事務管理(民法697条1項類推)として、保護者の同意なく治療ができます。
保護者の同伴を待つと重篤化すると予測される場合は緊急性ありと考えて良いでしょう。
(3)緊急を要しない場合
医師は応招義務を負っているので、①受付時に未成年者から症状の訴えがあり、②医師が平易な言葉で説明すれば治療に対する理解が得られる場合は、治療すべきでしょう。
後日、保護者が治療に異を唱えた場合であっても、標準的な治療であれば(ただし後記4の場合を除く)法律上何ら問題はありません。
ちなみに、健康保険証と治療費相当のお金を持参している場合は、親権者等の許可を得た上の来院であると考えて良いでしょう。
(4)入院・手術・輸血・侵襲性の高い検査や処置を行う場合
緊急を要しないが治療を開始した場合でも、入院・手術・輸血・侵襲性の高い検査や処置を行おうとする場合には、事前に保護者から同意を得るようにして下さい。
(5)虐待が疑われる場合
18歳未満の未成年者に対する医療ネグレクト・暴力等虐待を疑い、児童相談所に通告した結果、親権者等の同意なく治療できることがあります。この場合は、児童相談所と連携を図って下さい。
なお、本稿は、婚姻歴のある未成年者、2022年4月1日以降の満18歳以上には一切該当しません。