ひと頃は肥満を大敵と捉えて脱メタボに邁進していた時期があり、その後要介護問題から発展してフレイル、サルコペニアという筋肉量の減少を問題視する趨勢となった。その当時は、それぞれ時宜に叶っていたと捉えるべきかもしれないが、ここでは「肥満」の概念そのものが正しく捉えられていたのかについて再考したい▼筆者の営む小院にはプロアマ問わずアスリート達が少なからず訪れる。彼らが異口同音に訴えるのが、ドック健診で当たり前のように用いられている肥満判定BMI(体格指数)の問題点である。ご承知の通りBMIは体重/身長の2乗で表記されるが、25を超えると全て肥満の範疇に入り、異常判定となる。しかしこの単純判定で肥満とされて来院した筋肉隆々の元格闘技選手に「君は肥満だから減量すべし」と指導することが正しいことではなかろうし、スポーツの否定にもつながりかねない▼それでは何が間違ってるのか。BMIの根本的問題点は、肥満の本質的基準であるべき「体脂肪率」が勘案されていないことである。サルコペニアの観点で表現された「かくれ肥満」もBMI至上主義の弊害の現れとも言えよう▼我々医療者はリアルに個々と接し、日々身体を診ている。表面的数字に囚われず中身を見透すことを実践しているところに臨床の本質がありそうである。(運動医)
MENU