HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて、京都新聞に掲載された連載コラムが一方的にワクチン忌避に誘導しかねないとして、協会は10月15日、掲載方法について同社に意見を申し入れた。
HPVワクチンは、接種後に痛みやしびれ等の訴えが相次いだことから、定期接種を維持したまま「積極的勧奨」が中止となり8年が経った。8月に自民党議連からの積極的勧奨の速やかな再開を求める要望を受けて、田村憲久厚労相(当時)が再開に向けて検討すると回答。10月1日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で、積極的接種勧奨の差し控えを中止する時期に来ているとの認識で意見が一致するとともに、接種後に症状が出た人に対応する医療体制の強化や、接種の呼びかけを控えていた間に接種を受けられなかった人の接種機会の確保についても検討する必要があることなどの意見が出された。
このような状況の中で、9月28日の京都新聞に掲載された文章は、ワクチン接種は「個人がさまざまな情報を得た上で、自分の意思で決めるべき事柄」とする一方で、「接種による真の利益はまだ証明されていない」と有効性には触れず、リスクのみが強調されたものとなっている。接種後に生じた症状に苦しんでおられる方々のことを思えば、著者の心情も汲めないことはないが、それでも偏りがあると言わざるを得ない。
公平・公正な視点から読者に正確な情報を提供することが、報道機関の役割であることを鑑みれば、個人名での文章とはいえ、毎年約2800人の子宮頸がんで亡くなる方々や残されたその家族に同じ紙面上で言及がないことは、掲載の仕方に問題がある。例えば、上記分科会で示されたような最新の国内外疫学データ(有効性、安全性エビデンス)やHPVワクチン副反応疑い報告の状況や今後の支援体制についての記事も対等に取り上げるなど、今後の紙面づくりにおいて考えてほしいと求めた。
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