感染症対策の恒常化 初・再診料の引き上げを  PDF

22年度診療報酬改定で厚労省要請

 協会は22年度診療報酬改定に対する要請署名運動を実施。これに基づき9月24日、厚生労働省保険局医療課にウェブにて要請を行った。協会からは福山副理事長、吉河・種田・植田理事および事務局が参加、保険局医療課は課長補佐の堤俊太郎氏、主査の川嶋康平・德田紋華・杉理江各氏、企画法令第1係の金久保樹氏が対応した。本要請は倉林明子参院議員(日本共産党)の紹介で実現、同席いただいた。

 協会からの要望は14項目。要請署名は316筆となり、懇談終了後、保険局医療課を通じて厚生労働大臣に提出した。また、署名の写しを首相、財務大臣、中医協会長および委員、衆参厚生労働委員に提出し要請した。総選挙後の首相、財務大臣、厚生労働政務三役にも要請する予定。
 まず、新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて、22年度改定でも継続することを求めたのに対しては、協会から9月24日の閣議後に田村厚労大臣(当時)が感染症対策実施加算の打ち切りを表明したことに言及。「廃止は残念だ。コロナへの診療の実施・未実施にかかわりなく、感染症対策への費用は発生する。全ての医療機関への支援を続けてもらいたい」と訴えた。
 これに対して厚労省は「確かに必要と思うので、財務省との調整も必要だが、引き続き中医協で議論したい」と回答した。
 診療報酬の引き上げ、薬価・特定保険医療材料の引き下げ財源を全て本体改定に補填すること、入院料、入院時食事療養費の引き上げの要請について、厚労省は「改定率に関わるところ。医療機関の経営状況、賃金の動向、国民負担を踏まえ、予算編成過程で検討していくものと考えている」との回答に留まった。
 初・再診料等の大幅引き上げを求めた件についても、厚労省は「引き続き中医協で検討する」との回答にとどまったため、協会から「20年度改定答申時、中医協は、体系が複雑化しており、分かりやすくなるよう検討すると附帯意見している。本点数を上げてシンプルな点数にしてもらいたい」と重ねて要請した。

在医総管、訪問診療の逓減制廃止を強く求める

 在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料で、単一建物居住者を複数診療した場合に引き下げる取扱いの廃止を求めた件について、厚労省は過去に高齢者施設等が医療機関に患者を紹介し、医療機関が患者紹介料を支払うといった不適切事例があったため、逓減制を導入したと回答。これに対して協会は「一人ひとりの居宅に伺い、オーダーメイドの治療方針を立てている。人数で減算するのは理論的にもおかしい。在宅医療を担う医療機関の思いとして、ぜひとも改善してほしい」と指摘した。
 7種類以上の内服薬投薬の逓減制の廃止を求めた件について、厚労省は「多剤処方による副作用のリスクや、飲み忘れ、飲み残しを防止する観点から現行の取扱いとしている」と回答。協会は「医療過疎地域において、複数科にわたる疾患を一人で診なければならない場合、必然的にどうしても薬の種類は増える」「高齢者は当然複数の疾患を持っており、7種類以上の処方を制限されると患者の不利益につながる」「かかりつけ医でケアをする方向と外れており、矛盾している」として改善を求めた。
 調剤技術基本料の引き上げ、院内投薬時の分包機を用いた一包化の評価の新設を求めた件について、厚労省は「薬局と医療機関の点数を比較することは適切ではない」と従来通りの回答に終始。協会は「高齢者にしっかり服薬してもらうため一所懸命一包化している。他院で処方された薬も再度整理して一包化している現状。何万円もの費用を毎月負担しながら一包化しているのに、全く評価されていないので考慮してほしい」と要請。加えて「この間、会員調査を複数回実施し、要請の度に資料を提出している。過去には厚労省でも調査してみたいとの回答を得たこともある。厚労省でも実態をぜひ調査してほしい」と訴えた。
 最後に「『重症度、医療・看護必要度』等コロナ禍における施設基準の特例、経過措置の延長を求める緊急要望書」の要請とコロナ患者受入医療機関等の経過措置について確認した後、協会から「ジェネリック医薬品の流通について、多くの医薬品が出荷停止や調整中となっている。院内処方を行う開業保険医の診療所では、医薬品がなくて困っている状況だ」と現状を報告して要請を終了した。
 今回の要請では、コロナ禍において中医協の議論が遅れているためか、終始踏み込んだ回答がなされなかった。協会は中医協の議論を注視し、必要な個別項目の改善に向けて引き続き取り組んでいく。

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