協会は福祉国家構想研究会、全日本民主医療機関連合会と共催でオンライン連続講座「いま、社会変革に何が必要か―コロナ禍を乗り越える変革思想」を6月26日、7月24日、8月28日に開催した。第1講座「コロナ禍の労働市場と労働運動―非正規・貧困・ジェンダー平等の視点から」には、全国から92人が視聴。概要は以下の通り。
講座は二宮元・琉球大学教授をコーディネーターに、後藤道夫・都留文科大学名誉教授、蓑輪明子・名城大学准教授が講演。講演後は3氏によるディスカッションとなった。
後藤氏は「年功型男性労働者中心の労働市場管理と『〈標準世帯〉支援型』社会保障―コロナ禍が露わにしたその構造と社会危機―」と題して講演。新型コロナウイルス感染症による底の見えない困窮の拡大をさまざまな数字を読み解きながら解説した。
今回のコロナ禍では大規模に雇用収縮が進むのに対し、対応すべき所得保障が機能していないことが困窮の背景だと指摘。女性・高齢者・学生の雇用の非正規化・短時間化も困窮拡大の要因とした。
これらは日本の社会保障の脆弱性であり、「保障」ではなく「支援」となってしまっていることが根本原因だと解説した。
続いて、蓑輪氏が「コロナ禍の女性労働―ケア労働の視点から」と題して講演。女性の労働力化が進められたことで、受け皿としての保育制度の整備が求められてきたが、コロナ禍でその不十分さが露呈したと指摘。フォーマルあるいはインフォーマルなケア労働に対しての保護、女性の雇用保障、とりわけ非正規雇用の労働者への保障がなされていないと断じ、その保障なしにはケア労働の保護も実現しないと述べた。
後半のディスカッションでは、参加者から寄せられた質問を踏まえ、二宮氏を聞き手に鼎談で進行。シフト制労働者の所得保障やヨーロッパと日本のワークライフバランスの違いなどで各講師が意見交換し、最後に二宮氏から、近年「社会的投資」という言葉が使われるが、社会保障と雇用労働市場をどう立て直すかはセットでこれからも考え続けねばならない。それがこれからも福祉国家構想研究会の課題だと考えると締めくくった。
(5面に第4講座の案内)
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