私の思い出 「わが人生に悔いなし」でいこう 中路 裕(西京)  PDF

ハモニカに恋する二人やカブト虫
夏の海波とたはむる弟オトと我ワレ日傘の祖母がじつと見守る
あきらさん近寄り難し祖父なりきちょっとおいでと幼き僕を

夏休み

 祖母に連れられて弟と行った香櫨園での海水浴。夏休みになると、弟と2人で阪急電車を十三と西宮北口で乗り換えて祖母の住んでいる夙川(当時、特急は通過)へ行くのが恒例だった。拙著『ぼくの既往歴』にも書いたが、小学生2人だけで行かせた両親、日傘をさして泳いでいる僕たちを見守っているだけだった祖母、のんびりしていた良い時代であった(が、一つ間違えば大変なことに!?)。海水浴のあとはラムネ(指で開けたことも)とスイカ、眠くない昼寝はつらかった(嘘寝をしていると時間がなかなか経たない、わざとらしい寝返りをうつ)。
 えべっさん(正式には「えびす宮総本社西宮神社」という)へもよく連れて行ってもらった。余談ですが「走り詣り」は江戸時代頃から行われていましたが、「福男選び」は昭和15年、「一番詣り」の参拝者を称えたのが始まりだそうです。

扇風機

 父親が十三市民病院に勤めていた時「マイク飛び歩き」というラジオ番組に出演した。大阪市内のとある養護施設での診察風景が放送された。ついでに我が家(といっても祖父の家の離れである)にも取材陣がきた。サプライズで父親がプレゼントを持って帰ってくるという想定であった。「何だと思う?」「知ってるで、扇風機やろ」と僕(今でも子どもって正直)。「なんや、驚かそうと思てたのに」と父(子どもは知らないことになっていたらしい)。当時(昭和32~33年頃)、扇風機は珍しかったのだろうか? 当時、窓は開けっぱなし、蚊も虫も入り放題、蚊取り線香(匂いが好きだった)と蚊帳が必需品であった! 裾を振って素早く入るのがコツだ。弟と四隅を外した蚊帳でじゃれていたなあ。

蓄音機

 母屋に祖父母が住んでいた。応接間にはラッパ状の拡声器がついている蓄音機があった。78回転のSPレコード(standard playing record)だが、何を聞いていたか定かではない。横の取っ手をぐるぐる回してレコード盤を動かしていた記憶がある。しばらくして「EP(extended playing record)」「LP(long playing record)」「シングル盤(ドーナツ盤)」「コンパクト盤」なんかが主流となった(付録のソノシートもあった)。

 中学生になって「I want to hold your hand」「Let’s make a memory」などを買った。以後、ベンチャーズ、ローリングストーンズ、アニマルズ、特にビートルズなどの作品を購入して暇があれば聴いていた。しかしレコードはCD(MDも)の出現によって1980年代以降は激減した。最近になって昔のレコードやカセットテープが聴きたくて複合機を買ってしまった。探さなくっちゃ!!

祖 父

 祖父は1人しか知らない。祖母は3人(曾祖母も)知っている。
 父方の祖父は、嵐山などで料理旅館(今はない嵐峡館など)を営んでいたので、朝早く長靴を履いて中央市場へ行っていた姿をよく見ていた。可愛がってもらった記憶はない。正月に「裕、ちょっと来い」と言われ胡坐の中に座らされたり、「お酒を飲むか?」「そろそろ嫁さんをもらわんとあかんな」と小学生の僕に。怖い存在だった。みんなピリピリしていた(ように見えた)。昨今のお爺ちゃんとは違う。今から思えばこれが祖父なりの可愛がり方だったのだろう。僕が高校2年の時に急死、いろいろ話を聞きたかった、残念!!

西宮の祖母

 可愛がってくれた。僕も慕っていた。元気だったが、ある日転倒し大腿骨頸部骨折で入院した。時間をつくっては西宮まで見舞に行った。リハビリの甲斐なく寝たきりになり、徐々に弱ってきた。90歳を過ぎていた。良かれと思い、行くたびに頑張らなあかん、僕が手紙を書くし返事を出してほしいなどと言っていた。今から思えばしんどかったんだろう。後悔している。

地蔵川(通称)

 桂の地蔵寺の傍を流れている。よく魚取りをした。初めて手づかみで魚を取った時の感激を忘れない。蛭にもかまれた。輪ゴムで縛って血をしぼった(年かさの男の子の知恵?)。竹の棒で対岸へ跳んだことも(たまにはまるのだ)。上流には水遊びできるところもあった。ずいぶん前に川底などコンクリートで固められた。魚も藻も住みにくくなったろうな。魚取りをしてみたい!!
◇  ◇
 以上、昔を思い出す今日この頃である。
 今年で71回目の夏である。義父・繁喜が好きだった竹内まりやの「人生の扉」ではないが、「この先いったい何度…だろう」と思う毎日である。父・博が練習していた裕次郎の「わが人生に悔いなし(作詞:なかにし礼、作曲:加藤登紀子)」といきたいものだ。

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