76年前、原爆投下の後に放射能を帯びた黒い雨が降った。国は、それを浴びて被爆した人への被爆者援護法の対象を当時の気象台の調査による大雨地域に限ってきた▼しかし、大雨以外のところにも、黒い雨を浴びた方はたくさんおられ、救済を求めて裁判を起こしたいわゆる「黒い雨」の裁判で、広島高裁判決に対し首相が上告しないと政治判断をした。政府としては、今までの考えからの転換や他への影響を考えると受け入れがたいと、広島県・市に上告するよう求めていたところへの政治判断である▼長年、地域の方と国の間に挟まれて裁判を続けさせられ、苦労していた広島県・市はやっと人心地ついたことであろう。しかし、上告しないと言いながら、その判決をすべて受け入れるというのではなく、受け入れがたいところもあるという中途半端な状態で、内部被爆を認めたくないということもあるらしい▼政府として上告に傾いていたのを転換したのは、いわゆる官邸主導の政治を見せつけるためもあるのであろう。首相が就任早々に、携帯電話料金の引き下げやNHK受診料の引き下げなど、本来すべきでないようなことをして、“やった感”を出したりしているのと同列でこのようなことを決断したのであれば、黒い雨を浴びた方々に失礼な気がする。しっかり向き合ってもらいたい。(門雀庵)
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