2021年5月28日に公布された「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(改定医療法)の施行に向け、国の作業が進んでいる。主な改定内容と施行期日は以下のとおり。
①長時間労働の医師の労働時間短縮および健康確保のための措置の整備(24年4月1日に向け、段階的に施行)
②タスクシフティングなど医療関係職種の業務範囲の見直し(21年10月1日施行)
③共用試験の義務化やスチューデントドクターの制度化など医師養成課程の見直し(23年4月1日施行)
④新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項の医療計画への位置づけ(24年4月1日施行)
⑤地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組みの支援(公布日施行)
⑥外来医療機能の明確化・連携(22年4月1日施行)
⑦持ち分の定めのない医療法人への移行計画認定制度の延長(公布日施行)
このうち2024年度からの第8次医療計画に関わる内容(④⑤⑥)の具体化や、計画の作成指針策定、医師確保計画、外来医療計画等を総合的に議論する場として、厚生労働省は「第8次医療計画等に関する検討会」を立ち上げ、6月18日に第1回会合を開いている。同日、検討会の下に三つのワーキンググループ(以下、WG)「地域医療構想および医師確保計画に関するWG」「外来機能報告に関するWG」「在宅医療及び医療・介護連携に関するWG」が設置された。
①は引き続き「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で議論され、法改定を受けてすでに7月1日に会合(第12回)を開催している。②は「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」が20年11月12日にとりまとめた「議論の整理」に沿った法改定がなされ、実施目前である。③は、医道審議会等での議論が行われるものとみられる。
コロナ経ても従来政策を深化
新型コロナウイルス感染症パンデミックは、日本の医療提供体制が新興感染症の脅威に対してあまりに無防備だったことを露呈させた。医療費抑制のために病床数を引き絞り、医師・看護師数を抑制してきた従来政策の延長線上には、新興感染症に対応できる医療体制の実現はないはずである。
しかし今回の医療法改定は、従来政策の転換ではなく深化を目指すものとなっている。例えば①について、医師の労働時間短縮に向けた取組みは重要である。だが、国は医師総数の不足を認めず、あくまで医師数抑制方針を維持したまま、いわゆるB・C(年間1860時間/月100時間未満の残業上限規制)特例水準の解消を目指す。そのために「長時間労働を生む構造的な問題への取組み」として、医療施設の最適配置の推進、地域間・診療所間の医師偏在の是正、適切な受診の促進を進めるとしている。
これらの「構造的問題」は、国にとって以前からの医療費適正化政策に他ならない。国の医療費適正化の取組みは、都道府県単位の「医療費の地域差」を縮減することを目標に据えている。
外来二分化で制限強化へ
地域差を生む主な要因として、入院医療費なら病床数・医師数、外来医療費なら医師数と「高い相関」があるとして、都道府県間の医療提供体制をフラット化(それも低位平準型で)が目指されてきた。
そのために地域医療構想の達成を目指し、改定医療法に盛り込まれたのが「地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組みの支援」であり、地域医療病院・病床の廃止・削減への財政出動の強化である。
こうした視点で外来医療の機能の明確化方針を捉えるならば、22年4月から施行される「外来機能報告制度」は、圏内の外来機能を「医療資源重点活用外来」と「かかりつけ医」に二分し、それぞれの必要数をあらかじめ外来医療計画に定め、地域医療構想の実現を都道府県に目指させる仕組みに他ならない。その先にあるのは、「かかりつけ医」を通ることなしに専門科に受診できないフリーアクセス制限であり、「必要数」に基づく適正配置という名の開業規制の強化と言える。
協会は国の各会議体の議論を注視・監視し、必要な意見を届け、国の思惑を明らかにする取組みを強化していく。
厚生労働省・第1回外来機能報告等に関するWG(21年7月7日)資料より作成