新年度にあたって 医療安全対策部会 副理事長 林 一資  PDF

患者とのトラブルなど困った時は協会へご相談を

 2020年度(20年6月~21年5月)も会員各位からさまざまな医療事故に関する報告・相談をお寄せいただいた。
 20年度の主な特徴として、①新型コロナウイルス感染症の影響もあってか、医療事故報告件数は例年と比べて少なめの23件に留まった。②事故報告数の病診比率は、病院と診療所がほぼ同数となった。③複数回の医事紛争を報告する医療機関も複数あった。④解決率については、全事故報告の内98・1%(過去最高)が解決に至っており、依然として高水準を保っている―などが挙げられる。
 20年度は、19年度に新型コロナウイルス感染拡大防止のためやむなく延期とした「転倒・転落」に関する医療安全講習会(全2回)を開催した。
 「転倒・転落」に関しては、協会に寄せられる医事紛争の相談の中でも採血時のトラブルと同様に相談件数が多い。院内で「転倒・転落」が発生すれば、医療機関側に管理ミスがなくとも、患者側は転倒・転落により負傷したという事実のみに注目。医療機関側の責任を追及するケースもあり、協会としても解決しがたい事故の一つとして捉えている。
 講習会では、院内で発生した「転倒・転落」の具体的な対応や「転倒・転落」が起こることを想定した上での取り組みの重要性などについて、医師の視点からだけでなく、損害保険会社の視点からも講演してもらった。
 5月に開催した「転倒・転落」に関する講習会については、全国でも同じように「転倒・転落」の対策に苦慮している医療機関の状況を鑑み、全国の保険医協会・医会の会員にも広く参加を呼び掛けた。結果、600人を超える参加申し込みがあり、関心の高さが伺えた。
 今年度も、これまでと同様に会員各位が日々の医療安全(紛争対応・紛争予防)に取り組む上で、参考となるような講習会等を企画したい。そして、日常診療における「安全」と「安心」を一層高めていただきたいと考えている。
 また、新型コロナウイルス感染症についても、ワクチン接種に伴う医療事故の報道を耳にするが、今後、医事紛争にまで発展するケースが出ないか危惧している。
 協会では、引き続き新型コロナウイルス感染症に対しても、ホームページ等を利用して医療安全の面から可能な限り情報発信に努めたいと考えている。
 協会は、半世紀以上も医療安全に取り組んできた全国的にもまれにみる医療団体である。医療事故など患者とトラブルが生じた際には、ぜひ協会にご相談いただきたい。

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